第1話
始まりの日#1
空を見あげると、雲ひとつない青天だ。
キラキラして可愛いキャラクターの健康サンダルに、黒のスウェット姿で堂々と道を歩く。
行き先は未定。
4月。太陽がのぼりきったこの時間は、学生なら学校に行っている時間だ。
だけど、あたしはスウェット姿。
横を制服姿の学生が急いで走りぬけていった。
遅刻だねぇ~……。
走りさっていく学生を見ながらあたしは、歩いた。
あなた、16歳。
本当なら高校1年生。
さっきの学生みたいに制服を着ている年齢だ。
しかしあたしは、中学卒業後、高校に進学しなかった。
中学3年生のときの担任は進学しろとか、もったいないとかうるさかったけど、とくに高校に行ってしたいことがあるわけではなかった。
そんなあたしを叱ってくれる両親もいなかった。
あたしがまだ小学5年生のとき、両親は交通事故でこの世を去った。
大型トラックの居眠り運転が原因だった。
反対車線を走っていたあたしたちの車に、トラックが突っこんできたんだ。
後部座席にいたあたしだけはかろうじて助かったけれど、あの事故は一生消えない大きな爪痕を残した。
事故の影響で、あたしの目は外傷性の続発緑内障を発症した。
高齢者に多い病気らしいけど、外部からの衝撃が原因で、若い人でも発症することがあるそうだ。
初めは、なんだか目が見えにくいような気がしたけれど、それはほんの一瞬で、たいして気にもとめていなかった。
片方が見えにくくても、反対側の目が補助してくれていたから。
だけど、気づいたときには病気はかなり進行していて、今では右目はほとんど見えない。
一度こうなってしまったら、視力は戻らないそうだ。
そしてあたしの場合、まだ見えている左目も、いつの日か見えなくなるそうだ。
症状には個人差があるらしい。
あたしの目はいつの日か必ず、見えなくなる。
そんな爆弾を抱えて、“学生”という括りで縛られたくなかった。
手もとには、いつかのためにと両親がコツコツ貯めてくれていたお金と保険金がある。
しばらくは、なにもしなくても生きていけるくらいの額。
両親がいなくなってから中学を卒業するまでの約4年間、あたしは親戚の家に居候していた。
そして、中学卒業を機に家を出て、後見人という形をとってもらい、ひとり暮しを始めた
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