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第1話

親切な少女に恋をする。
今日も僕は誰かの大切なものを奪う。
華麗に、魔術と奇術を使って。
今日も有名な魔術師のお屋敷で、光る綺麗な宝石を盗んできた。
ただ困ったことに、盗みがバレてしまったんだ。もう既に銃で撃たれて、腹からは血が出ている。
どこでもいい。誰でもいい。
こんな悪いことをしている僕を受け入れて、助けてくれる人はいないかい?
少しずつ目を開ける力が緩くなる。
仮面を外せば視界が広がる。
でも、正体がバレてしまう。
よろよろと歩きながら、助けてくれそうな家を探した。
周りを見渡すけれど優しそうな人はあまりいない。
せいぜい花を摘んでいる少女ぐらい。
声をかけようかな…。
お腹を抑えてずるずると近づいた。
それから、吸えるだけ息を精一杯吸ってから言葉を発した。

「お嬢さんの家はどこかい?」

いきなりだったからきっとびっくりしたんだろう。
全身が固まって、指先の震えが持っている花に伝わっている。
こっちは腹から全身に痛みが広がっている。
女の子がふるふると震えながら指した指の先には立派な豪邸が。
この街一番の魔女が捨てていった家じゃないか。
ということはこの少女はその魔女の娘…?
もういい。もし屋敷の使用人とかにバレたらそこで盗みはお終いにしよう。

「お嬢さんのお屋敷で、この傷の手当をしてもらえないかな」

少女の瞳はかくかくと動いていた。
迷っている。申し訳ない。
でもこっちの傷はどんどん痛むんだ…。早くしてくれよ…。
少女はゆっくりと頷いた。
それから、さっきの行動の遅さと比べ物にならないはやさで僕の手を取り、屋敷に連れて行ってくれた。
屋敷に入ると中には箒やステッキ、様々な道具が置いてあった。
魔力で負った傷じゃないから、魔力では治らない。
少女は救急箱を取り出した。
隣の部屋では何やら女の子が呪文を唱えている。
なんだか楽しそうだ。
僕も魔術の練習をしたなぁ。
でも、ここはあの魔女が捨てて行った屋敷だ。
きっとここの娘は皆、ものすごい魔術の教育を受けているんだろうな…。
そう思っているのが彼女にバレたのか、彼女は少し悲しそうな顔をした。
少女は僕の傷を手当してくれている。
使用人に頼めばいいのに。…いないのか?
こんなに小さい娘が傷の手当なんか出来るのか…。僕は感心した。
僕に頭のてっぺんを向けて俯いて、彼女は消毒をしたり、何かを貼ったりした。ちょうど、髪飾りの薔薇のピンが見える。とても可愛らしい。
ジロジロ見ていても、彼女は何も言わない。じっと彼女のことを見ているうちに、僕の中の何かが揺れ動いたみたいだった。
────包帯を巻いている彼女が、近くにいるだけでなんだかどきどきしてるみたいで。守ってあげたくて。きっと夜も眠れないんじゃないかって。
彼女の手が止まった。手当が終わったんだ。
「手当ありがとう。またいつかお礼をするね」
僕はそう言って自分の屋敷に帰った。
彼女にまた会いたいと思った。
きっと僕は、小さな小さな女の子に恋をしたのだろうな。

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こまいぬ
こまいぬ
僕はたまに歌を書いたりポエムを書き留めたりお話を書いたりします
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