プリ小説
一覧へ

第6話

かあさま
僕は彼女の手を引いて、ホテルに辿り着いた。
さっきの性格の悪いお姉さんが住んでいたお家に比べたら少し古い気もするけどさ。
チョロンと髭がついたおじさんに案内されて、部屋まで階段を上っていく。
この調子で5階までのぼるのか…。
途中の階で、マイクを持ってなにか話してる女の人がいた。周りには沢山男の人が。
有名な女の人と、そのファンかな?
目を離した隙に、その女の人に彼女が近づいていっている。
周りの大人はきっとみんな酔っている。何をされるかわからない。
彼女の身が危ない。
少し、彼女の口元が動いた。
ま、ま。
か、あ、さ、ま。
……え?
もしかして、あの女の人は、母親?
だとしたら…。
…だめ。
だめだよ。
見ちゃダメだ。
街一番の魔女だったんだぞ。
何をするかわからない。
女の人の視線が、男の人達から女の子へ移る。
きっと彼女が近づいたことに気づいたんだな。
それからさっきまでの美しい顔を崩さぬまま冷たい声で

「邪魔だからあっちに行って。
目障りなの。」

と呟いた。
彼女はショックだっただろうに、お姉さんの時と違って逃げ出しはしなかった。

「ねえ、お母様でしょう?」

無邪気にキラキラとさせた目を母親だと思われる女性に向ける。
なんて可愛いんだ。
でもきっとその女性にとって、子供がいたことは周囲にバレたくなかった事実。
僕はすぐに彼女の手を引いて逃げるつもりだったのに、それより前に女性が手をあげた。

「ごちゃごちゃうるさいのよ!
あなたが私の子供?そんな訳ないでしょう!さっさと消えないとどうなるか分かっているの?」

ワインの瓶をさっと持った女性は、彼女に襲いかかろうとしている。
咄嗟に瓶を腕でかわして彼女を抱きしめて守った。
その瞬間、全てが静かに、止まったような感覚に陥った。
ぎゃあぎゃあと騒いでいた母親は一瞬で冷静になったようだった。

「誰、あなた…」
「僕のことです?」
「えぇ」
「彼女を守る仕事をしている者ですが」

…他にいい表現が思いつかなかったんだ。僕は彼女を抱きしめながら答えた。女性は会話を続ける。

「この娘からお金を?ふん…楽な仕事ね」
「お金は取ってませんよ。僕が好きで勝手にやっているだけですから」

好き。
そう、僕は彼女のことが好きだから。
女性は男の人達の方へ戻りながら

「あっそう。邪魔だから帰って下さる?」

と言って去っていった。
しょうがない、ここにいては彼女の心がどんどん痛むだけだ。

「では、そうすることにします」

仮面を整えて、彼女を抱きしめていた力を弱める。
彼女はいいの?という顔をしていたから、

「もっといい所があるはずだよ」

と優しく声をかけて、急いでホテルから飛び出した。
髭のおじさんはびっくりしていたけどそんなこと気にせずにホテルから出た。

シェア&お気に入りしよう!

この作品をお気に入りに追加して、更新通知を受け取ろう!

続きはまだありません

この作者の他の作品も読んでみよう!

こまいぬ
こまいぬ
僕はたまに歌を書いたりポエムを書き留めたりお話を書いたりします