忘れ物を取りに戻った部室は、まだ鍵がかかっていなかった。
部活が終わってもう三十分は経っているが、誰かまだ残っているのだろうか。
「…はぁ、な…七世…っ…」
静かにドアを引くと、中から聞こえてきたのは淫靡な先輩の声だった。
不意に呼ばれた自分の名前に思わず返事をしそうになる。
制服のズボンは左の足首に絡まり、こちらへ突き出された尻はゆらゆらと揺れた。
真っ白な肌と程よい肉付きに、一瞬 女であるかのように錯覚してしまう。
「あっ…も、…やば……ぁ、ッ…でる」
俺の耳に届いた声は、聞き慣れた先輩の声とはまるで違っていた。
普段はあまり口を開かない、どちらかと言えばクールな人だ。
「ッ…ぁ、ん…な、なせ…っ…七世!」
それが、こんな一面を隠し持っていたなんて。
…少し、意地悪したくなる。
「呼びました?先輩」
そう声をかけたのが、先輩と俺の奇妙な関係の始まりだった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。