第89話

自分のすべきこと
378
2022/03/04 09:00
颯太
黎弥くん、そっち向かいます。

世界さんを倉庫の陰に隠してから、黎弥くんたちの元に向かう。ふと上を見ると、ビルの上にいた男は既にいなくなっていた。
1人で乗るとすごく大きく感じる車は、タイヤがパンクしていて動きそうになかった。仕方がないので、徒歩で向かうことに。
黎弥
あ、来た
颯太
どうですか?
まだ様子見。スナイパーがいたら、無闇矢鱈に闘っても無駄だから。それに、4対4じゃ勝敗なんてもう決まったようなんもん、
颯太
分かりました。僕1人で行きます。僕が足止めしておくのでその間に逃げてください。
北人
ちょっと、颯太何言っての?
颯太
そもそも、僕がまいた種なんで。僕が蹴りをつけます。
北斗
それは、FANTA内の話であって、
颯太
いや。もし、俺が殺し屋になるなんて言わなければFANTAは出来てなかったし、そうしたらこんなことにはならなかった。
黎弥
颯太、俺も行く。
颯太
え、
黎弥
いやぁ、俺だって最後ぐらいカッコつけたいじゃん!
颯太
黎弥くん……。別に、カッコつけで言ったわけじゃないです。
でも、ありがとうございます。
分かった。じゃあ颯太、スナイパーがいないかだけ先に確認してきてくれる?俺ら準備しとくから。
颯太
分かりました。

スナイパーがいないか確認するために、隼さん達の車を降りて倉庫付近のビルの上を1つ1つ確認していく。
倉庫から見て北西付近の廃ビル。その前にそれよりも大きいビルがあってよく見えなかったが明らかにその屋上には誰かがいた。スマホのカメラを起動させアップにしていく。すると、はっきりと見えた顔。金色の髪の毛に、いくつも空いたピアス。それは、紛れもなくついさっき世界さんを撃った神山だった。
俺は、そのビルへと走った。




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卑怯なことをしたとは思う。でも、こうでもしなきゃあいつは行くって聞かないだろうから。
車から、颯太が見えなくなったのを確認して武器を持ち倉庫に行く。この作戦には他の3人とも納得してくれた。あなたのためにも、颯太には生きていてもらわなければいけないから。これが強いてもの罪滅ぼしだ。
倉庫の北西付近にあるビルの屋上にスナイパーがいるのは確認済み。
倉庫には3人、既に揃っていて臨戦態勢だった。暫くどちらとも動かず睨み合いが続いた。
カチッという音がどこからともなく聞こえてきたと思えばすぐにかわいた銃声が響いた。
ちらりと横を見ると、他の3人はいなくなっていた。相手側も視界の内にいるのは重岡だけ。
俺は、3人がけろっと戻ってきてくれることを願いながら重岡の動向を見て、次のアクションを考える。
一瞬、重岡の瞳孔が開く。
銃を取り出し、撃ち合いになるかと思った直後、重岡は口を開いた。そして、語られたその内容に俺は言葉を失った。
隙が出来た俺の頭を狙って重岡が引き金を引く。
少しずつ視界が狭くなっていく。俺は、颯太をスナイパーの元に行かせたことを後悔した。
それは、自分が撃たれたからか、それとも、



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神山智洋
もう、走るの早いねん。狙えへんかったやろ
颯太
狙わなかったんやろ
神山智洋
ありゃ、生意気

クスクスと笑う神山は未だスナイパーから手を離そうとしない。
ここで、俺は隼さん達からインカムを貰うのを忘れたのに気が付いた。これでは、スナイパーがいた事を伝えることも出来ない。
それを汲み取ったかのように神山は口を開く。
神山智洋
あぁ、あいつらはもうそろそろ終わりやないかな
颯太
終わり、?

まさか、と思い急いで倉庫へ向かおうと神山に背を向けた瞬間、発砲音が聞こえた。
神山の放った弾は屋上のドアの鍵の部分に当たり、もう開かないようになってしまった。
神山智洋
これで、2人きり。

さっきから神山の言うことの意味が理解できない。こいつらは何を企んでいるのだろうか。

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