瞼を開ければそこは夜よりも黒い真っ黒な世界だったっけ。なんか頭はクラクラしてて変な感じだった。
『こんな所に来ちゃいけないよ』
耳にねっとりと残る声が聞こえた。誰かがいる気がするが光が無くて分からない。
「私も来たくて来たんじゃない。ねぇ此処は?」
『大人の闇の世界』
「何だよ、それ…意味わかんない」
『だろうな。それにしても少女、何か心残りでもあ有りそうな目をしているな』
「…父さんを殺したい」
『死んだお前に殺す事など不可能だ』
「なら此処から抜け出してやるよ。こんな真っ黒な世界嫌だ」
『ほう。そんなに父親を殺したいのか』
「あぁ、父さんは僕のすべてを壊した」
『でもお前には大人の闇など分からないだろう』
「まぁ、それは…」
『闇など子供は分かっちゃいけない』
「知りたかったらどうすればいい?」
『そんなに知りたいのか少女。なら全てを失くせ』
「失くす?」
『闇は何かを必要としない。必要とするものは全て破壊するんだ』
「はか…い?」
僕の頭が今まで以上にグラグラと揺れる。
もう意識が途切れる…
その時だっけな。
生涯絶対忘れないねっとりとした汚い声が聞こえたんだ。
今でもその声は覚えてる。
『全てを壊せ、少女』
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。