悲痛な叫び声が聞こえる。
ゴオッとなると炎。
崩れ落ちる建物。
私の前に佇む影も崩れていく。
そして、夢の中の私の叫びで目を覚ます…
ジャックの屋敷に来てから早くも半年。
これだけ一緒にいてもジャックのことが全て分かった訳ではなかった。
ジャックは朝に弱い。
挨拶しても寝ぼけてるし、起きない時だってある。
もともと夜行性って事もあるかもしれない。
でも…私は知っている。
ジャックが夜中に抜け出していることを…
昨日だって夜起きた時にいなかった。
私と初めて会ったのだって夜だったし…
優しい笑顔でこちらを向く。
最初は興味本意で聞きたいだけだった。
あんなことが起きるとは知らず…
なぜかこの時私の体は、彼の言うことを聞くことを拒否しているようだった。
ジャックの一言で私の頭には次々と光景が浮かんでくる。
私はこの話を知っている…
記憶が走馬灯のように体を駆け巡る。
最後に悲鳴とコウモリの大群が見えたかと思うと、私は立っていられなくなった。
そうだ…
あれは私の家族だ。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!