「…私、は…誰?」
ボクと名乗る男はソレを覗きこみ、言った。
「君はキミさ」
「私は、ワタシ?」
「あぁ、そうだ。君はキミ以外のなんでもないさ」
「そうなんだ」
ボクはまたもあたりまえのことを言う。だが、ワタシにはそれは初めての言葉だった。ワタシは自分が私であるということを知らなかった。
「ワタシはなにがしたいんだろう」
「わからないのかい?」
「えぇ、全く」
「じゃあ、ボクの話しを聞いてくれないか?」
「嫌だという資格は、ワタシにあるの?」
「あぁ。あるよ。君はここにいるからね」
ワタシは少し考え、頷いた。
「いいのかい? じゃあ、少し」
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。