「リンゴの問い?」
「あぁ、リンゴの問いさ」
ワタシは黙ってボクを見つめる。
「ここにひとつのリンゴがあるとして、君はこのリンゴをどうみる?」
ワタシは突然の問いに驚いたが、リンゴという個体に対しての問いに答えられないほどには混乱してはいなかった。
「ワタシには、美味しそうな、熟れたリンゴにみるよ」
「ボクにはね、不味そうな、腐ったリンゴに見えるんだ」
ワタシはただ頷き、ボクを見つめた。
ボクは驚き、ワタシを見つめた。
「馬鹿にしないのかい?」
「ワタシにはどう馬鹿にしたらいいのかわからない」
「ボクが出会った人はボクを馬鹿にしたから」
「なら、その人達は可哀想」
「どうしてだい?」
「ボクが多くの考えを持っているということに気付けないまま、去って行くから」
「……」
「ワタシはボクの話しを最後まで聞きたい」
「あぁ、喜んで話そう」
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。