第10話

*男のコ
23
2018/02/03 17:02
『悔しい』…?

あたし、叶ちゃんのコトそんな風に思っていたんだ。
でも、言われてみれば思い当たることはたくさんある。
例えば、転校してきてまだ女のコにも話しかけてきたりはしないのに、叶ちゃんが転校してきたその日クラスでは、新しいクラス委員を決めることになった。
そして叶ちゃんは、立候補して見事雪矢くんと同じクラス委員になった。
正直に言うと、心の何処かで『今日転校して来たばかりの人がクラス委員になるなんてなぁ…』 と感じていた気がする。
あたしは……そんなこと考えてたんだ。
自分で自分の感情が嫌になって先生に背を向けると、頭から毛布を被った。 そんな様子を見てか、先生はまた続ける。
保健室の先生
別に……悪い感情なんかじゃないわよ。むしろそれほど人を愛せるのは素晴らしいことよ。
月野 結愛
……え?
先生の思いがけない言葉にあたしは毛布から顔を出して、先生の声のする方を向く。
すると、先生は笑ってあたしに言った。
保健室の先生
……さて、次はあたしの話、聞いてくれる?
月野 結愛
……?? あ はい?
上手く状況を理解出来ないまま先生が話始めた。
保健室の先生
これは、ある男の子の話なんだけどね……


























――…それは、今から3時間前。





??
先生!結愛が…
――…ガラッ!!
焦る声と共に保健室の扉が乱暴に開いた。
保健室の先生
え?どれどれ………あら。凄い熱。奥のベットが空いてるわ。連れていってくれる?
??
え あ…はい!
一人の男子生徒が先生の指示に従い、腕の中でぐったりしている結愛を奥のベットへと運んであげる。
??
先生…結愛、だいじょぶ…スか?
保健室の先生
安静にしていればすぐ良くはなると思うけど……かなりの熱ね。とりあえず検温するから男子生徒はちょっと出てくれるかな?
男子生徒は、言われるがままベットを離れて、保健室の控え場所で落ち着かない様子でじれったそうに足を組んで待つが、心配で仕方ない様子が見てとれる。
1分ほど、たった頃。
ピピッ…ピピ……。
静かな保健室に体温計の音が鳴り響く。
なり終えた体温計を持って、カーテンを開けた先生が出てくる。
??
先生…結愛は…?
出てきた先生に男子生徒は、恐る恐る聞く。
保健室の先生
今は40℃もあるけど、ちゃんと安静にしてればじきに下がると思うわ
??
ホントですか!?
保健室の先生
ええ 心配いらないわ
先生の言葉にまさに言葉通り、胸を撫で下ろす男子生徒。
そして、同時にうつむきぎみに話始める。
??
先生……俺 どうしよう…
保健室の先生
何か悩み事?
??
そんな立派なモンじゃないですけどね…
先生の優しい声にまだうつむきぎみに少し苦笑いをして、また沈んだ顔をする。
??
俺……結愛のコト傷つけたかもしれない……
保健室の先生
……あらあら。あのコのコトね。
二人を見比べて少しいたずらっぽく笑う先生に、男子生徒はコクンと小さく頷いて、続けて言う。
??
ねぇ、先生。俺……どうしたらいい?
保健室の先生
あらあら…恋の相談なんて青春ねぇ
??
先生!!俺……真面目なんスけど……!!
憎みたいような、恨めないようなもどかしそうな顔で男子生徒が少しばかり反論する。
保健室の先生
はいはい。ごめんねぇ♪……そうねぇ、とりあえず何があったかは知らないけれど先生は、素直な気持ちを全部伝えることが一番いいと思うな♪
??
俺の……気持ち…スか?
保健室の先生
そうよ。好きな気持ちも、言えない辛さも、いっていいのか迷っていることも……全部話して二人で考えたらいいんじゃないかな?
??
そ、うですか…
――…キンコーン…カンコン……。

そんな雰囲気の中、始業5分前の予鈴の鐘が鳴り響く。
??
あっ、ヤバ…。じゃあ先生、俺授業出てくるので………失礼します
男子生徒は、先生に急いで一言告げると、走ってクラスへと帰っていった。






























保健室の先生
どう?青春でしょう~?
月野 結愛
え? あ はい。…そう…ですね…。あの、先生ひとついいですか?
保健室の先生
はい?なんですか、結愛さん
一人ニマニマしながら、嬉々として話す先生にあたしは、この話で気づいた疑問点を聞いてみる。
月野 結愛
ソレって、今日の3時間前の話…ですよね?
保健室の先生
そうよ??
月野 結愛
あの あたし今気づいたんですけど、一体誰があたしを教室から運んでくれたんですか??
保健室の先生
ふふっ 誰だと思う?
月野 結愛
え? えーと…
焦らして教えてくれない先生を相手に、あたしはまたまた一生懸命に頭を悩ませた。その時だった。
??
先生?俺です。……失礼します
音をたてながら扉が開き、一人の男の子が現れた。

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