『悔しい』…?
あたし、叶ちゃんのコトそんな風に思っていたんだ。
でも、言われてみれば思い当たることはたくさんある。
例えば、転校してきてまだ女のコにも話しかけてきたりはしないのに、叶ちゃんが転校してきたその日クラスでは、新しいクラス委員を決めることになった。
そして叶ちゃんは、立候補して見事雪矢くんと同じクラス委員になった。
正直に言うと、心の何処かで『今日転校して来たばかりの人がクラス委員になるなんてなぁ…』 と感じていた気がする。
あたしは……そんなこと考えてたんだ。
自分で自分の感情が嫌になって先生に背を向けると、頭から毛布を被った。 そんな様子を見てか、先生はまた続ける。
先生の思いがけない言葉にあたしは毛布から顔を出して、先生の声のする方を向く。
すると、先生は笑ってあたしに言った。
上手く状況を理解出来ないまま先生が話始めた。
――…それは、今から3時間前。
――…ガラッ!!
焦る声と共に保健室の扉が乱暴に開いた。
一人の男子生徒が先生の指示に従い、腕の中でぐったりしている結愛を奥のベットへと運んであげる。
男子生徒は、言われるがままベットを離れて、保健室の控え場所で落ち着かない様子でじれったそうに足を組んで待つが、心配で仕方ない様子が見てとれる。
1分ほど、たった頃。
ピピッ…ピピ……。
静かな保健室に体温計の音が鳴り響く。
なり終えた体温計を持って、カーテンを開けた先生が出てくる。
出てきた先生に男子生徒は、恐る恐る聞く。
先生の言葉にまさに言葉通り、胸を撫で下ろす男子生徒。
そして、同時にうつむきぎみに話始める。
先生の優しい声にまだうつむきぎみに少し苦笑いをして、また沈んだ顔をする。
二人を見比べて少しいたずらっぽく笑う先生に、男子生徒はコクンと小さく頷いて、続けて言う。
憎みたいような、恨めないようなもどかしそうな顔で男子生徒が少しばかり反論する。
――…キンコーン…カンコン……。
そんな雰囲気の中、始業5分前の予鈴の鐘が鳴り響く。
男子生徒は、先生に急いで一言告げると、走ってクラスへと帰っていった。
一人ニマニマしながら、嬉々として話す先生にあたしは、この話で気づいた疑問点を聞いてみる。
焦らして教えてくれない先生を相手に、あたしはまたまた一生懸命に頭を悩ませた。その時だった。
音をたてながら扉が開き、一人の男の子が現れた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。