第4話

*悩み
58
2017/12/23 15:46
月野 結愛
うーん……どうしよう、神奈ちゃ~ん!
神奈
だからぁ、べつになんだっていんだって~!!
肩で挟む受話器の向こうからけらけらと可笑しそうに神奈ちゃんの笑う声が聞こえてくる。
月野 結愛
そんなこと言わないでよ~
あたしは鏡を見ながらありったけの洋服をかざして、ケータイの向こうの神奈ちゃんに泣きつく。
神奈
て言うか、試合って1時からでしょ?今8時半よ?
神奈ちゃんの笑い声がまた聞こえる。
月野 結愛
だって~…試合なんて初めてで、何着てったらいいのか分かんなくて… ねぇ神奈ちゃんってば聞いてるの~?
あたしの声に一層声を大きくして笑って言う。
神奈
あはは!!それで、8時半起きって~!!いやー、乙女の考えはよくわかりませんなぁ…
(うぅ……)

核心をついてくる神奈ちゃんに反論する文句も見つからず、床に開きっぱなしの雑誌を手にする。
『女の子っぽく魅せるなら、ワンピースで試合観戦には動きやすいスタイルがいい』…かぁ。
ファッション誌の《一番可愛いコーデ!!》と書かれている特集ページを読みながら色んな洋服を手に取ってまた鏡の前にたつと、次々にかざして見せた。
月野 結愛
……結局いつもと変わらないかなぁ……?
何だかんだで現在時刻は、もう12時半を過ぎていた。
バスに揺られながら、そんなことを考える。何かと悩んだ末にいつもと変わらない私服になってしまった。
2つ程乗り継いで、広い野球場に到着する。

(うわー…。なんかすごいなぁ……)
誘導員
あの、応援の方ですか?
野球場の広さに圧倒されて、眺めていると係員の男性に声を掛けられた。
黒い髪は艶やかに反射し、綺麗な顔立ちをしたいわゆる『イケメン』だった。少し見とれて、あたしはハッと思い返す。
月野 結愛
あ…。はい。その……会場にはどこから?
あたしが恐る恐る聞くと、
誘導員
入り口の方は、あちらのみとなっております。どうぞごゆっくりお楽しみください
そう言ってニッコリ笑った。その笑顔は、とっても眩しかったけれど、雪矢くんみたいにドキドキはしなかった。

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