第5話

*ドキドキ
73
2017/12/31 16:05
神奈
おっはよ、結愛。で、どうだったのよ。ん~?
月野 結愛
あ、おはよ神奈ちゃん。え?何が?
神奈
とぼけないでよ、わかってるでしょ~?
早く言いなさいよ、とばかりに神奈ちゃんが肘でつついてくる。
月野 結愛
なっ、何もないよ~
あさっての方向を見ながら、ないない~と手を振る。
が、
神奈
あらー、カオが赤いわね。良かったねぇ
神奈ちゃんは口に手を当てて見通したようにニヤニヤ笑う。
















「試合終了ー!!」



審判のその声と共に二つに分かれる会場の雰囲気。
相手チームは可哀想な程に、悔しがる一方で雪矢くんたちチームは皆集まってワイワイして喜びあっていた。
…そう。雪矢くんたちは相手に1点も得点を与えず完全試合を終えたのだ。野球してるときの真剣な表情、楽しそうな少年っぽいカオ、次々と頭の中で浮かべては、一人でキューンとするコドウを感じていた。
その時、「リンゴちゃんっ☆」後ろからいつもの声が聴こえて、振り向く。
月野 結愛
…雪矢くん…!!試合、おめでとう
雪矢
おう。つか、ホントに勝っちゃったね俺ら!!マジでリンゴちゃんのおかげだったりして☆
雪矢くんがニカッと笑う。それはないよ~、とちょっと苦笑いするあたし。
幸せだなぁ…。そう感じてる間にも雪矢くんは、次々と話をする。
その話を聞きながらあたしはチラリ、横にいる雪矢くんを見つめる。
雪矢くんのこんな笑顔がもっとみたいなぁ…。
もっと側にいたいなぁ…。
なんだろ…。息苦しく感じる。
友人
おーい雪!!記念写真撮るから全員集合だってよ~!
観客席のしたから野球部の一人が雪矢くんを呼ぶ。
雪矢
おー、今いく!…あ じゃあ今日はホントありがとな
月野 結愛
うん。また明日学校でね
そう言ってあたしは小さく手を振る。
雪矢くんが駆け出して、あたしは彼の背中をしばらく見つめていた。
小さくなって見えなくなる頃、くるりと振り返ってこう言った。
雪矢
また!見にこいよな!!
それだけ言うと、向こうに走っていった。























神奈
…結愛……結愛!ちょっと結愛ってば!
月野 結愛
あぁ!あれ?何?神奈ちゃん
神奈
何?…じゃないわよ。幸せそうな顔なんかしちゃってさ。ホラ、雪矢来たよ!
神奈ちゃんが指差す方向には、男子たちに囲まれて教室に入ってくる雪矢くん。二人とも、目があった途端にそらしあう。
ガラリ。

先生
ほら。皆さん席について~
扉を開けながら先生が言う。
やば、と呟いて、神奈ちゃんが席につく。
先生
はーい、今日は実は…転校生がいます。さ、入って
ガラ。
ドアが開いて女の子が入ってくる。
キレーな子。
色白の肌に大人っぽさを漂わせる瞳。
そしてその頭から伸びる黒く艶やかでサラサラの髪。
そのコは、教室を見回すと少しフッと笑って、
美渚 叶
美渚 叶(ミナギサ カナエ)です。よろしく
と言った。
先生が席に案内して、ようやく今日の授業が始まる。
気のせいかそのコは、チラチラと雪矢くんを見ているみたいだった。

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