ガラ。
皆が話しながら教室の扉を開く。
そんな朝、あたしは机に顔を伏せて昨日のことを思い出していた。








『結愛…。』

頭の中で雪矢くんの声が蘇る。
雪矢くんが結愛って呼んだ。
それで……それで……。えっと…。
『結愛は……好きな人…いるの？』
また、蘇る。
どうゆうこと？あれって……。
雪矢くんもあたしのこと…。まさかね…。
あたしは、一人で顔を赤くしたり、嬉しくなったりする。 
でも…。
ふと、気づいた。
……雪矢くんは？ 雪矢くんはどう思ってるんだろ？
雪矢くんが、分からない…。

あたしは深く、ため息をついた。
その時だった｡
ガラッ。乱暴に教室の扉を開く人がいた。
なんと、神奈ちゃんだった｡

走ってきて神奈ちゃん、何も言わずにあたしを見ている。

神奈ちゃんはあたしの両肩をガシッと掴んだまま、下を向いたまま顔あげずに小さく呟いた。

心当りがない。一体神奈ちゃんはなんのことを言っているのだろう？

東 駿の一言に雪矢くんが来たことに気づいたクラスのみんなが教室の扉に注目する。
扉をあけて、入ってくる雪矢くんに誰もが言葉を失い、教室がざわめきに包まれる。
教室に入ってくる雪矢くん。
その隣には……美人転校生。

叶ちゃんの高くて、綺麗な声が雪矢くんに掛けられる。

雪矢くんの曲がっていたネクタイを叶ちゃんが直す。
そして、雪矢くんも照れ臭そうに笑う。

叶ちゃんがいなくなって、よりいっそうざわめく教室。
あたしは、そんなざわめきのなか自分でも分からない感情を抱いた。
雪矢くん……。
叶ちゃんとすごい仲良しそうだった。
それに、雪矢くんも『叶』って呼んでいたし、叶ちゃん雪矢くんのこと『雪くん』って……。
何も考えられない。微かに込み上げる水分が教室の景色を歪ませる。
……とっても辛いよ、ねぇ、雪矢くん？
男子にからかわれている雪矢くんを見つめて想う。

あまりにも口を開かないあたしを神奈ちゃんが心配してくれる。

熱い。辛い。これは、恋って言うのかな？
頭が…ズキズキする。
体が妙に重く感じる。…きっとあんな雪矢くんを見たから…。




























そして、あたしの記憶は途切れた。