9時55分。
あと5分で、約束の時間になる。
お姉ちゃんはさっきから落ち着かない様子で、時計をチラチラ見てはスマホを触っている。
そのときだった。
ピーンポーン。
インターホンがなった。
お姉ちゃんは、すぐに玄関に駆け出して、ドアを開ける前に髪を整えた。
ガチャリ。
お姉ちゃんがドアを開けると、そこにいたのは…。
威勢のいい声で、宅急便の人が言った。
お姉ちゃんは少し動揺しながら、差し出された紙に印鑑を押した。
お姉ちゃんは、そう言ってソファーにバタリと倒れ、うつ伏せになった。
お姉ちゃんは、彼氏が来る前から緊張しすぎて、疲れてしまったらしい。
お姉ちゃんが眠気に襲われ始めたとき。
ピーンポーン。
インターホンが鳴って、お姉ちゃんは飛び起きた。
次こそは、彼氏だろう。
お姉ちゃんは、髪を整えて、大きく深呼吸をして、玄関に行った。
ガチャリ、とドアを開ける音が聞こえた。
お姉ちゃんの声は、いつもと全然違った。
緊張していて、小さくて、控えめで…。
頬をピンク色に染めてもじもじしている様子が、見なくても頭に浮かんでくる。
足音がだんだん近づいてくる。
なぜか私までドキドキしてくる。
ガチャ。
リビングのドアが開いて、お姉ちゃんの後に入ってきたその人は…。
一瞬、時間が止まったような気がした。
お姉ちゃんの彼氏は、予想以上だった。
予想以上に…
──カッコよかった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。