そう言って二人は笑い合う。
頬を赤くしながらお互いに見つめ合う姿は、それはもう恋人同士だった。
“はい”と、“そうです”と、答えようとするのに、声が出ない。
私は仕方なく、コクリとうなずいた。
お姉ちゃんの彼氏は、私ににこっと笑ってみせた。
その笑顔はもう、まさに天使だった。
反則だった。
“可愛らしい”なんてさらっと言っちゃうなんて。
こっちは心臓がバクバク鳴ってるというのに、お姉ちゃんの彼氏は少しも照れる素振りはない。
お姉ちゃんは、ぷうと口を膨らませる。
お姉ちゃんの彼氏はクスクスと笑う。
お姉ちゃんの顔は、みるみるうちに真っ赤に染まっていった。
そして、お姉ちゃんは話題を変えようと口を開いた。
お姉ちゃんの彼氏は、一見優しそうに見えるけど、実はいじわるでドSだ。
見ていたら、わかった。
私は、パッと目をそらした。
どうしよう…
お姉ちゃんの彼氏なのに。
ついつい、ドキドキしてしまう。
急にそんなこと言われても…
お姉ちゃんの彼氏だし、私にとっては先輩という存在なわけだし。
私がそう言うと、お姉ちゃんは「じゃあ私、なんか買ってくるね」と言った。
私は、お姉ちゃんの彼氏が来てるから…と思って「いや、私が買ってくるよ」と言った。
だけど、お姉ちゃんは「いいよ」と買いに行ってしまった。
お姉ちゃんが買い物に行って、家には私とお姉ちゃんの彼氏の二人きりになった。
なんか、変だな。
お姉ちゃんの彼氏と二人って。
普通におかしいよね。
お姉ちゃんもお姉ちゃんだ。
自分の彼氏を妹と二人きりにしておくなんて、何考えてるんだろう。
動揺する私を、お姉ちゃんの彼氏はじーっと見つめてくる。
“隼人”と言わざるを得ない状況だった。
思わず、“さん”とつけてしまったけど。
…いい、よね?
その目はもう、悪魔だった。
お姉ちゃんの彼氏は、うーんと考えたあと、口を開いた。
なんで私が、お姉ちゃんの彼氏を“隼人くん”と呼ばなければいけないんだ?
私はわけがわからず、混乱していた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。