第13話

Episode_13
479
2018/01/07 07:41
月曜日になった。
学校に行くと、教室に入るやいなや、菜摘が“おはよう”の一言も忘れて切り出した。
篠原菜摘
篠原菜摘
ねえ、どうだった!?
その菜摘の勢いと言ったら、私が思わず後ずさりしてしまうくらいだった。
梶原麗奈
梶原麗奈
ど、どうだったって…何が?
篠原菜摘
篠原菜摘
碧麗先輩の彼氏に決まってるでしょ!
梶原麗奈
梶原麗奈
あ、あぁ…
なんて言えば正解なんだろう。
カッコよかった、って言うのもなんか違和感を感じるっていうか。
一目惚れした、って正直に伝えるのは絶対無理。
篠原菜摘
篠原菜摘
どうしたの?
イマイチだった、とか…?
梶原麗奈
梶原麗奈
い、いや…
イケメンなんじゃないかな
篠原菜摘
篠原菜摘
えーどっちよ〜
菜摘は、キラキラと目を輝かせた。
篠原菜摘
篠原菜摘
…ねえ、誰だったの?
この学校?
そういえば、どこの学校か聞いてないな…。
梶原麗奈
梶原麗奈
えっとね…
梶原麗奈
梶原麗奈
…星宮隼人、って人
その瞬間、菜摘は大きく目を見開いた。
篠原菜摘
篠原菜摘
えっ、待ってそれって…
3年生だよね?
梶原麗奈
梶原麗奈
え、あ…多分そうだと思うけど
篠原菜摘
篠原菜摘
多分て…え、もしかして
麗奈知らないの?
知らないって…、何が?
篠原菜摘
篠原菜摘
星宮隼人先輩って、めっちゃモテモテですっごい有名な人なんだよ!?
そうだったんだ…。
知らなかった。
隼人くんって、そんなに有名人だったんだ。
お姉ちゃんがそんな有名でモテモテな人と付き合えたなんて、信じられない。
篠原菜摘
篠原菜摘
あっ、噂をすれば…!
梶原麗奈
梶原麗奈
ん?
菜摘の目線を辿った先には…
篠原菜摘
篠原菜摘
あの人でしょ?
碧麗先輩の彼氏って
隼人くんがいた。
とたんに、胸がドキドキしてくる。
梶原麗奈
梶原麗奈
そ、そうだよ
私が隼人くんの方を見ていると、隼人くんがチラッとこっちを見たときに目が合って、私は慌てて目をそらした。
だけど、間に合わなかったみたいだ。
星宮隼人
星宮隼人
あ、麗奈ちゃん
逃げようかとも思ったけど、体が動かない。
ドキドキしすぎて…。
星宮隼人
星宮隼人
なんで目そらすの?
梶原麗奈
梶原麗奈
えっ、あ…いや……
隼人くんは昨日と同じ、意地悪な笑顔だ。
みんなが見ている気がして、気が気じゃない。
そりゃ、モテモテな有名人がいたら、注目の的になって当たり前だけど。
菜摘はというと…。
口をぽかんと開けてかたまっている。
3年生の男子A
おい隼人、やめとけー
3年生の男子B
そーだよ、いじめんなよなぁ。
かわいそうじゃんか
そう言われても、隼人くんは懲りない。
星宮隼人
星宮隼人
…ふふっ。
また話しかけるね
隼人くんは、悪魔要素が含まれた満面の笑みを見せて、歩いて行ってしまった。
さすがに、学校で話しかけられたら色々とまずい。
さっきから、周りからの冷たい視線を感じるのは…気のせいかな?
同級生女子A
梶原さん、どういうこと?
隼人先輩とどういう関係なの?
同級生女子B
そうよ、ありえない!
なんで梶原さんが隼人先輩に話しかけられてるわけ?
廊下から様子を伺っていた2、3年生の女子の先輩からも、冷たい視線を感じる。
どうしよう…。
篠原菜摘
篠原菜摘
えっ、ちょ…麗奈!?
私は、教室を飛び出した。
無我夢中で走って、トイレに駆け込んだ。
隼人くんって、そんなに有名な人だったんだ。
知っていたら、こんなことにはならなかったのに…。
どうしよう…
これからも、周りの女子からああいう冷たい視線を向けられて過ごさないといけないの?
絶対耐えられない。
結構まずい。
みんな、私のお姉ちゃんと隼人くんが付き合っていることを知らないのかな?
それとも、知っていてあの視線…?
話しかけてもらえたのは嬉しかった。
だけど、かなりまずい状況だ。

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