きっかけは別に大したことではない。
去年の秋、僕が2年生の時だ。
まだ君に僕っ子って事が知られていない
まだ蝉の声がうるさい秋。
席替えで君の席の後ろになった。
ただそれだけの事。。
名前は前から知っていた。
──澤本穂貴。
声が大きくて、フレンドリーな明るい性格。
そして男子にしては身長は小さめなのだろう。
背の順では前の方だった。
クラスは違った。
ただ、君のいるクラスに僕の友達がいたから、顔を出しに何度か教室に入った程度だ。
僕の友達が僕と君に交互に話をするから、直接会話はしなかったものの、君とは顔見知りになった。
『神崎さん、よろしく!』
君のこの一言で始まった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!