その ひと言で、時間が止まる。
さっきまで、私たちの視界を覆い尽くしていたクリスマスの飾りたちは、もう、見えなくて。
たった ひとり、彼だけに、私の意識は引き寄せられる。
…… 寒さも相まって、赤くなった耳。
さっきから ぎこちなく、右へ左へ反復する瞳。
いつもの彼みたいに、揶揄うような表情も、なくて。
それらが ただ、止まった時の流れの中で、私の期待を、少しずつ ふくらませていく。
…… 自分から聞いたのに、こうやって、期待して待っているだけなんて、私は きっと、ずるい。
彼の口が、そう動いた。
それが、自分に都合の いい妄想なんじゃないか、なんて、ちょっと、信じられなくて、思わず零した。
ほっぺを むに、と つねられて、いつもの笑顔が向けられる。
…… 正確には、いつもより少し、赤いけれど、笑
それが痛くないことよりも、高鳴ってしまう心臓が、夢じゃないことを、教えてくれる。
一度 離した私の頬を、何回か ぷにぷに つつくと、今度は両手で むにむにされる。
即答されては、その手が離されることもなく、ただ ひたすらに、彼の体温を感じる。
その手つきが、撫でるように優しくて、あたたかくて。
だんだん あがっていく顔の温度も、直に伝わってしまうから。
少し背伸びして、彼の顔に、両手で触れる。
…… 私の手じゃ、彼みたいに、すっぽり覆えなくて。
彼の手の大きさを改めて感じて、そんなことに、いちいち どきどきしてしまう。
にへ、と笑った彼の頬を、 …… 本当に、なんとなく、
どちらからともなく、笑い声が溢れる。
こんな時間が、どうしようもなく、好きで。
今まで、気付けば過ぎ去っていたはずのイベントが、初めて、“ 特別 ” に一歩、近付いていく気がした。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。