プリ小説

第9話

よくある話~JM~3


雨が降ってきた。

雨は激しさを増していく。


いつも外れる天気予報は当たったみたい。


持ってきた傘を差す。









誰かがこちらに向かって歩いてくる。

こんなバケツをひっくり返したような雨の中

思い当たる人物なんて一人しかいない。





「…ジミンっ」



あなたはいつもそう。

悲しいことや、辛いことがあった時

俺の名前を呼ぶ。

助けてくれと言わんばかりに。



その事がどれだけの意味があった事なのかを

今やっと分かった気がする。









カタッ






「ジッ、ジミン…?」





傘を投げ捨て、

俺は自分の腕の中に、あなたを閉じ込めた。



「ねぇ、なにっ…」

『いいから。ここにいて』



あなたの声を遮るように言う。



「私っ、フラれちゃったっ…」

『うん』

「ジン先輩っ、好きな人いるんだってっ」

『うん』



俺の腕の中でそう言うと

あなたは静かに涙を流した。

そして消え入りそうなほど、か細い声で



「好きな人がいるって辛いんだね」



そう言った。



『あなたは頑張ったよ』



心臓が痛い。

言い出してしまえば楽なのは分かっている。

でも、出来ないのはなぜ?






「ジミンはいないの?好きな人」

『ん?いるよ』

「誰なの?教えてよ」












きっと、あなたは想像もしないんだろう。


俺の愛する人が自分だってこと。












雨は止むことを知らず、


俺たちに打ちつけてくる。






































『あなたが好きなんだ』




そう言った後、

俺の腰に回る手の力が、強まったのは何故だろう。











俺たちは幼馴染。


幼馴染のよくある話。


幼馴染同士の恋愛関係。



よくある話だけど、当たり前じゃない。




この距離感が心地よくて、

言い出したくても言えない。

壊れてしまうかもしれないから。




幼馴染の距離感は難しい。





でも募る思いは待ってはくれない。











雨はより一層激しさを増し、


投げ捨てた傘は頼りがいもなさそう。




これは風邪ひくこと間違いなし。










「…ジミン」

『ん?』

「本当に大切な人ってこんな近くにいるんだね」

『そうだね』

「ジミン、私ねっ…」

『それ以上は言わせない』




濡れた髪と頬を目にした。























唇に柔らかい感触がする。



濡れた頬は雨のせいなのか。


それとも涙を流したせいなのか。







『あなた、好きだ』











俺たちのよくある話の恋は

まだスタートライン。





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ひかり
ひかり
Maybe I'm in your maze. 過去作はこちらかプロフィールから。 ✏︎「王様」→完結 ✏︎「사랑」→不定期更新、短編 ✏︎「恋心の行き先」→連載中 ✏︎「ジョングク先生」→完結 ✏︎「Reader Canvas」→リクエスト小説