第2話

LOVEYOURSELF~JK~2
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2017/12/29 10:00
今日はあなたに


「気分転換に、外でない?」


と誘われて、病棟の外に出ている。


外に出るのは久しぶりで、

病室にいる時よりも、空気が澄んで感じられる。


あなたのおかげもあって、

リハビリに懸命に行っていた俺は、

車椅子から、松葉杖まで回復した。


俺はあなたと一緒に

外のベンチに腰をかけると、

スケッチブックを取り出し、

絵を描き始めた。


「絵、好きなの?」


絵は小さい頃からなんとなく描いていて、

芸術家みたいに上手いとは言えないが、

それなりに得意だった。


『趣味』


あなたが隣にいる事自体、

心臓が持たないだろうと思うほど、

結構どきどきしていた。

絵なんて普通、暇な時にしか描かないし、

趣味とか言いながらも、本当は

照れ隠しの行為。


これ以上話してると、

まじで心臓やべぇなと思った俺は、

耳にイヤホンを付け、

あなたの声も、周りの音も、

全てを耳に入れないようにした。


彼女も諦めた様子で、

手元にあったスマホをいじり始める。







トントントン


彼女が俺の肩を叩いた。

珍しく絵に集中していた俺は、

彼女のその動作を無視して描き続けた。


すると

俺が耳に付けていたイヤホンが、

耳から外された。


「ねぇ!」


少し怒った様な口調で彼女が言う。


『何?』

「あれ見て」


彼女が指を指した方に目線を向けると、

そこには、

女の人がギターを弾き、歌っている姿があった。


俺は何故か、その音楽に惹かれ、

演奏している場所に近づく。


どこかで聞いたことのある音楽だった。


ふと、ギターの方に目線を向けた。

ギターの先端には、

何かが引っ掛けられていた。


「Y.K.」


そう書かれた物だった。


「Y.K.」が何なのかが、

俺はとても引っかかった。

でも、今の俺には、

その物の意味を思い出す事が出来なかった。


「グク?」


彼女は俺を不思議そうに見つめてくる。


「何かあったの?」

『あっ、いや、別に何も』

「そっか」

『そろそろ戻ろっか』


俺は彼女を連れて、病棟に戻った。

















それがあなたとの、

最後の時間だったとは知らずに。







次、最終話です!

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