美希奈(ミキナ)と呼ばれた女の先輩に
夜瑠(ヨル)と呼ばれた男の先輩が
多目的ホールの入口から話しかけている
──私の腕を掴んだまま
なんか、私、目立ってません?
そりゃあ男の先輩に腕を掴まれて
部屋に入ってきたら
その先輩が話しなんか始めたら
誰だって振り返るだろう
てゆーか
腕!!
掴まれたままなんだ、よね
うん
ダメだ
なんか変な汗かいてるし
男の人ってほんとにダメなんだってば!
こういう状況でときめける人って
すごいと思う
本当に
周りの視線が痛いよ
先輩、遅いです
もう、みんなの目線がこちらです
私の人生、短い間ですが
未だかつてこんなに目立った経験などありませんよ
もーやだよ
心折れそう……
!!!!
ま、また
変な声出た
先輩がたまらず吹き出してしまったらしい
失礼な!!
そこの女の子!
何にやにやしてるの!!
ときめかないよ!こんなの!!!
ううぅ……
顔に熱が集まってくるのがわかる
断じて、恋とか愛とか
そういうものを感じている訳ではない
そこのとこは理解して欲しい……
そうして逃げるように先輩のそばから離れ、
真穂のもとへ向かった
はて?
へ?誰がですか?
え?
え、ほ、ほんとですか?
部長って……
横目でチラッと夜瑠先輩を確認する
バッチリ先輩と目が合ってしまった
あの人今、ニヤってした!
絶対からかわれてる……!
美希奈先輩が夜瑠先輩をチラッと見て言った
先輩2人が自己紹介を終えた
絶対気に入られてないよ!
あの人、私見て面白がってるだけだもん!
てゆーか男の人なんだよ!?
そこが1番ダメなとこなんだって!
だって!!苦手なものは苦手なんだもん!
もうなんか、嫌な予感しかしない……
どうなっちゃうの!!?!
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。