第10話

部活動体験 7
224
2018/02/18 12:05
夜瑠
はい、これ、スティック
あなた

あ、りがとう、ございます

と、スティックとかいう
長い棒みたいなのを渡されたんだけど……


とにかく心拍数やばいし……!

手汗もすごい


スティックが滑っていきそうだ
夜瑠
じゃあ、えーっと、まず、スティックは、
手元から3分の1くらいの所を持って
あなた

は、はい

こう……かな?

夜瑠
そう、それで、人差し指巻き付けて、
スティックを親指でおさえる
えっと?

ま、きつける?



????と
はてなマークだらけの頭で

自分の手を見ながら格闘していると、
夜瑠
こう
そう言って、夜瑠先輩が
自分のスティックを置いて
あなた

っ……!!

私の手を、正しい形に直してくる



ということは


夜瑠先輩は私の手に触っているわけで……
あなた

っ……!!……っわ!

──────ガタガタッ


ゴンッ────────
あなた

っい…………た

夜瑠
大丈夫!?
真穂
あなた!
あんまり驚いたもので

後ろに足を引いた時に、足が絡まって

思いっきり後ろにこけ、

近くにあった掃除用具入れのロッカーに頭をぶつけてしまった
真穂
あなた!大丈夫!?
夜瑠
ごめん!怪我、ない!?
そう言って、夜瑠先輩が立たせようと手を伸ばしてくれるけれど
あなた

っ…………

手を取れない

こわい

夜瑠
あ…………

無意識に、私の顔は、怯えたような表情になっていたみたいで

夜瑠先輩の顔が傷ついたように
少し歪んだ
真穂が、近くに来てくれて
どうにか真穂の手を借りて起き上がる
あなた

え、と、その……

夜瑠先輩を

傷つけてしまった


先輩は、何も、悪くないのに──────
あなた

す、すみませっ……!

真穂
あの、夜瑠先輩
お願いします、許してやってください
あなた

し、……ほ

私が謝ろうとした直後、
真穂が私と夜瑠先輩の間に入ってくれた
夜瑠
どう、いうこと?
真穂
この子、過剰なくらいに、男の人が苦手なんです
真穂が説明をしてくれている間、

私は真穂の後ろで身を縮こませることしかできない
真穂
なので、男の人に触られる、というのが
すごく怖いみたいで
夜瑠
そう、なんだ……ごめん、何も、知らなくて
夜瑠先輩が謝ってくれるが

私は真穂の後ろで首をフルフル振るのが精一杯だ


大丈夫です、の、意味を込めて
真穂
あなた、今まで男子に自分のこと、
1度も触らせたことないんです
そうだ

保育園で男子にいじめられてから

私は男子には近づかない、

話さないって決めてる



もちろん、触らせたことだって1度もない


……男子に近づかないようにしてるから

必然的に、そうなるんだけど



なのに、どうして

夜瑠先輩とは話せたんだろう

真穂
その点、夜瑠先輩には頭触られても大丈夫だったみたいですし
そんなに心配、いらないと思いますよ
あなた

………………!

ほんとだ

なんで気づかなかったんだろう


話せてる……どころか


夜瑠先輩、2回も私の頭、触ってる…………!
夜瑠
そう、なの?
夜瑠先輩が、不安そうな目で私に訴えてくる


分からない、分からないけど……
あなた

そう、かも知れません……

夜瑠先輩なら、もしかしたら


大丈夫…………なのかもしれない



そういった途端、
パァっと夜瑠先輩の顔が明るくなった
夜瑠
じゃあ、今度は気をつけるから
もう1回、ドラム、してみない?
あなた

は、はいっ……!

そう言って私は
もう一度スティックを握り直した

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