第7話

しち。
5
2017/12/26 18:08





「ようこソ、ココは僕ガ生きていル国だヨ」

少しずつ目を開けて目が慣れたところで、目の前でかざしていた左手を離
してみるとそこには緑の中に沢山の色の花が咲いており、まるで天使が下
りてきそうな日の光が所々を照らしていた。周りは山に囲まれており、
国というからおそらく国の偉い人が住んでいるであろうとても大きな城が
見える。
しかし周りに家らしきものは見当たらない。

「町なラこの先ニあルから移動シヨ」

何も言っていないのに心を読まれているようで少し気分が悪い。

「はい。」

下を見るとコンクリートで作られたような道が一本、真っ直ぐ続いている。
その道を黒猫は小さな手足で一歩一歩また歩き始めた。後ろに続いてさっきの道
を歩いて行ったように私も歩き始めた。




しばらく無言の時間が続くと黒猫が口を開いた

「ソうだ、僕の名前を言ッてイナかッたネ、僕ノ名前はチルだヨ」

聞いてもいないのに自己紹介をされても反応に困る…
チルか、なんか意味でもあったかな。

「僕ノ名前のチルに特に意味ハ無いよ」

声に出して聞いてないことを少し笑いを溢したように穏やかにチルは答えた。

これって私も自己紹介したほうがいい感じかな。でも今更名前を教えてもな…

「まタすぐニ考え出す!ぐるグる考エてナイで思ッたコト言えバいいノに」

やっぱり頭で考えてること読まれてるよね…

「聞いてルよ君ノ心の声、君が頭ノ中で考エテるこトを聞いテるノハ楽しく
て飽きナイヨ」

またも少し笑いながら私の頭の中を覗いてチルは答えた。

「あまり聞かないでくれますか…」

考えてることを聞かれるのは正直不快だ。
今思ってることが伝われとはっきりと心の中でつぶやく。

「不快か、ゥふ、わかッタヨなルベく聞カナかッタことニするヨ」

ほんとにわかってくれているのだろうか、まぁ聞かれていても言葉に出され
るよりましだと思い歩く事に集中した。










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