私は万歳した。
本当は、行きたい理由はもう一つあった。
確かじゃないけど、
やっぱりこの手紙を書いた人を、私は知っている気がする。
同じく向こうも私のことを知っている。
そして、昔、仲が良かった気がしてならない。
早くもバッグに荷物を詰めているゆうが、歯ブラシを片手に話しかけてくる。
お母さんの手紙に、今はイタリアに滞在していると書いてあった気がする。
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私たちは空港行きのバス停まで歩き始めた。
私たちの家の前に2台の黒い車が止まり、中から黒いスーツにサングラスの男達が降りてきた。
慌てて電柱の影に隠れる。
男達は、家のインターホンを何度も押す。
今更、実感が湧いてくる。
今まで味わったことのないような、恐怖が、
固まっているゆうの手を引いて走り出した。
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空港での待ち時間、飛行機の出発までまだ時間があるので幼稚園にお休みの電話を入れていた。
でも、他の先生たちもみんな休養なんて、どうしたんだろ…
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!