廊下を歩いていたときだ
「あっ」
「どうしたの?」
私が急に足を止めたので隣を歩いていたうっかと
少し前を歩いていた悠真が止まった
「なんか忘れ物か?」
「唄?」
私の視線の先には伊藤先輩がいた
1ヶ月ぶりに会ったけどやっぱりかっこいいなぁ
「あれって、伊藤先輩?」
うっかも気づいたようだ
その問いかけにコクリと頷いた
「私伊藤先輩にお土産渡してくる」
「え、ちょ、唄!」
伊藤先輩は階段を上がって行ってしまった
でも恐らく行くのは屋上だろう
屋上に行こう
──────────────── 屋上
「はぁ…はぁ…あれ?伊藤先輩は?」
伊藤先輩の姿は無かった
屋上にあるタラップを上がる
と、そこにいたのは
「え、人?」
男子生徒が横になって眠っていた
黒髪だから肌が白いのがよく分かる
あれ、でも私この人とどこかで…
制服がうちの制服ではないということは恐らく転校生
顔ちっさいなぁ…
私はその人にこれでもかというくらい顔を近づけた
じっと横から観察する
これこの人が顔こっちに向けたらキスしちゃうよね
それぐらいの近さだった
色白いし小顔だし、いいなぁ
「ん…」
と、次の瞬間だ
男の人が寝相を変えて顔をこちらへ向けた
「!?」
思った通り
唇は触れ合った
そしてなんというバッドタイミングなのか
男の人は私と唇が触れ合った瞬間に目を覚ました
これが、私のファーストキスでした(事故)
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。