「あの悠真ってやつ、なーんか俺に突っかかってくるよな」
帰り道
隣には柴さん
周りに誰も人がいないことが不幸中の幸いだ
こんなのふたりで歩いてるところ見つかったらおしまいだよ
ファンになんて言われることやら…
「悠真はいい子ですよ」
「俺嫌われてる?」
ハハッて笑う柴さん
「そうかもしれませんね」
「おいそこ否定しろよ」
だってまぁ…ね、うん
「…もしかして」
「はい?」
「アイツって女いんの?」
悠真に彼女?
「たぶんいませんよ」
「好きなヤツは?」
「さぁ…小学校のときはいるって言ってましたけど最近はわかりません」
「ふーん…なるほどね」
何がなるほどなんだろうか
頭の中には“?”でいっぱい
・
・
「そういえば柴さん家どこなんですか?」
「ここの突き当たり曲がったところのすぐ近く」
「へぇ」
あれ、もしかしてご近所さん?
いやいやいや…まさかね
・
突き当たりを曲がると私の家が見えてきた
そして
「「到着」」
柴さんと声が被った
え?
「あの、ここ私の家ですけど…」
「だから、俺の家でもある」
「…もしかして、居候って…」
「そ、俺のこと」
ウソ…
「今日からよろしくな。ブタ」
…悪夢だ
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!