第14話

聞きたくない
201
2017/12/28 15:20
【悠真side】


「悠真この問題分かんない」

「そここの前も教えたけど」

「忘れた」




ここは俺の家
優香が明日の課題考査のため勉強を教えろと言ってきたので家に来ている



小さめの机の上で勉強する俺たち
向かいに優香が座る









「悠真」



優香が手を止めて俺の名前を呼んだ



「なに?」

「あのこと、唄にいつ言うの?」











“あのこと”




それは












「引っ越しするって」











そう、引っ越しのこと


俺は2学期いっぱいで転校する
夏休みの間にじいちゃんが亡くなった
だから一人暮らしになるばあちゃんの家に住もうということになり
引っ越すことになった




「言うよ、そのうち」

「そのうちねぇ。早く言いなさいよ?」

「へーへー」










「自分の気持ちもね」









さっきまで深刻な顔をしていた優香が今度はニヤニヤしながらそう言った









「唄今好きな人いないから押せ押せムードでいったらいけるんじゃない?」

「…それができたら苦労してねーよ」










唄は俺の初恋


小学校のころからずっとずっと好きだった
優香の友だちということで紹介された唄
一緒に遊んだり、唄と話したりしていくうちに唄のことが好きになっていた




「小学校のときもさ、唄が男子と話してただけで妬いてたよね」

「…うるせぇ」

「照れなくてもいいって」

「照れてねぇ」




あーマジうぜぇ
なんでこんな話…










「今日見た感じ隆也くんと仲良さげだよね?」



“隆也”というワードにピクリと反応してしまった



「すごいお似合いだなぁ。まぁでもモデルと付き合ったら唄ファンの子に目つけられちゃうよね」



確かにそうだ

あんなヤツ…










「でもふたりが付き合うことになったら私は全然応援するし、お似合いだし ──── 」

「優香」










そんな話、聞きたくない










「勉強しないなら帰れ」










唄は誰にも渡したくない










「ご、ごめん…」

「…」










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