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第1話

メガネ越しの世界
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2017/12/27 11:08
月島蛍 ▷▶︎▷ メガネ越しの世界 ♡ 両片思い

影山飛雄 ▷▶︎▷ 恋人たちの放課後 ♡ 両思い

日向翔陽 ▷▶︎▷ 太陽のような人 ♡ 片思い

山口忠 ▷▶︎▷ 好きな食べ物 ♡ 両片思い


随時更新していきます( ¨̮ ) リクエスト等ありましたらよろしくお願いします...♪*゚
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教室の窓辺の席で伏せた人影。
時計を見ればあと少しで最終下校時刻で慌てて声を掛けた。

「月島くん」

反応はなく、規則良く聞こえる寝息だけが聞こえる。
いつも蜂蜜のように綺麗で何処か冷めた目が閉じられ幼く感じる。

ふと、机の端に置かれたメガネに手を伸ばす。
かける訳でもなく、ただ目の前にかざした。
全ての世界か近く感じる。
黒縁から外側が、私の世界で、
黒縁から内側、レンズを通して見る世界が、月島くんの世界。
"違う"この差に胸が苦しくなる。

「何してんの」

ビクッと体が強張り、目の前にかざしていたメガネを落としてしまった。

「っ、ごめん、!」
「大丈夫だから、触んないで」

床に落ちたメガネに伸ばしていた手を引っ込めてもう一度謝ろうとした瞬間、最終下校時刻のチャイムが鳴った。

「本当に、ごめんなさい」

頭を下げて足早に帰ろうとした私の腕を月島くんが掴んだ。

「言い方、悪かったかも」
「へ?」
「この眼鏡、柄のところのネジが緩んでんの」
メガネを外して見せた物は確かに緩んでいた。
月島くんは言葉を続ける。

「キミそういうの気にするデショ」

はて、と首をかしげた私に月島くんは盛大なため息を漏らしメガネをケースに仕舞いスペアを掛けた。

「落としたから壊したんだ、とか勘違い言って弁償されたって困るってこと」

そういうことか。
確かに、例え月島くんに『元々緩んでただけだから』と言われても気を遣われているんだと思って弁償すると思う。
嫌われてたわけではなかったんだ、
安心してホッと息をつくと月島くんはそそくさと教室のドアを開け振り向いた。

「いつまでそうしてんの」
「あ、えと、もう出ます」
「家まで送るから」
「っへ、?!?」

サラリと言って少し前を歩く彼について行く。
歩く歩幅も、速さも緩めてくれているんだ。
隣を歩けるようになりたいな、なんて。
高望みはしないから、どうかこの帰りの時間が1秒でも長く続くといい。

「そういえばさ、」
「うん?」
「僕のメガネ使って何してたの?キミは目、悪くないよね?」
「あー、えっと、あのね、」

言い淀む私の言葉を待つ姿から見逃してくれるワケではなさそうで。

笑わないでね、と釘を刺して言葉を紡ぐ。
告白ではないけど、告白紛いな、そんな言葉。

「月島くんの見てる世界が見てみたかったの」
「....ぷっ、くくっ」

口元を手で隠しながらお腹を抱えた彼の背中をポカポカと殴る。

「はぁ、あのさ、」

私の腕を掴んで彼は言った。

「僕の世界も君の世界も、見てる物は同じデショ」

黒縁で分けられた内と外の世界。
線を引いて分けていたのは私だったんだ。
見ているものは同じ
そんな単純な事を難しく感じていた。

「キミが言うように、百歩譲って違うならさ、教えてよね」
君の見てる世界、だよ。
僕だけ知らないの不公平デショ?

そう言ってふわっと笑った彼。
私は「もちろん」と微笑む。
耳が赤いのは夕日のせいじゃありませんように、なんて心の中で思いながら。


メガネ越しの世界 END 月島蛍

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