私が顔を真っ赤にすると
龍君は涙を流し
そっと笑った。
龍君の足はさっきよりも薄くなっていて
私はそれに気づき龍君の手を握ると
龍君も私の手を強く握った。
そう言うと前を向いていた体を
私に向け真剣な顔を作った。
(私の行動次第で…。)
私がそう言うと龍君は首を振った。
(私がどうしたいか?)
そう私が悩むと
龍君は私の頬にある涙をぬぐった。
え?っと龍君の体を見ると
向こう側が透けていて
私は我慢していた涙が一気に溢れて
袖で涙を吹いた。
透けていた体は
足からどんどん無くなっていき
私は龍君の手をさっきよりも強く握った。
最後まで言おうとすると
龍君は私の口に手をおいて
涙を流しながら笑った。
そう言って龍君は消えていき
私は涙をふいて笑顔を見せた。
そして私はベンチから立って歩き始めた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!