「起きてください、着きましたよ」
『ん、どこですか…』
「おそらく貴方の記憶の中の一番幸せだった時間が
存在する場所です」
『もう過去に来たんですか?』
「いえ、それは今からですよ」
ずいぶんと慣れたように会話をしながら座席を立ち
開いたドアから誰もいない建物の屋上へ降りる。
「ここは学校ですか」
『そうみたいですね…』
「ここが貴方の戻る時間の場所です、では過去に行
きましょう」
左腕にしている黒色の時計の針を左方向に一周
回してセットした。
「よろしいですか、では横にある真ん中のダイ
アルを押す準備をしてください。」
そういうと私の指の上から彼女はダイアルに指
をかざした。
「待ってください、私の指が…」
―――カチッ。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。