さかっちに謝っておこう。
言い訳は…腹痛でトイレに行ってたでいいや。
親友の上野彩智(うえのさち)、通称さっちゃんにも同じ言い訳をして、帰る支度をした。
頭をポンポンしてくる大輝。
『あたしは子供じゃない…!』
って毎回言うんだけどさ…
「悪ぃ…いつもの癖で」
そう爆弾スマイルで言うから何も言い返せない。
呆れた顔をして言葉を返す。
でもね…こうやって、バカして笑えてることが本当に嬉しいんだ。
一度…大輝を失って気づいた。
“大切な物は、失ってから大切だと気づく“
これが…本当だということ。
“あたりまえ“を大切にしないといけない。
あたりまえがあたりまえじゃなくなった時は、自分が自分じゃいられなくなった。
人の話なんて頭からすぐ通り過ぎちゃうし、食欲も全く湧かないし、生きている心地がしない。
怖いと思ってたこの現象…
あたしの愛するスマホで検索したら
「タイムリープ」
って出てきた。
難しいことはよく分かんないけど…なんか、過去や未来に意識だけが行くことらしい。
だから、体はタイムリープしに行った所の状態なんだって。
最悪…なんて思ってたけど、よく考えてみれば…
大輝が死んじゃった未来を、変えれるかもしれない。
今はこうしてタイムリープさせてくれた、神様(?)に感謝しないと!
このタイムリープ…絶対無駄にしない。
まだ、分かんないことだらけだし…怖いけど、大輝を救ってみせる。
心に強く決めた。
この時のあたしは…未来を変えることが、どんなに難しいことか…まだ知らなかったんだ。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!