『じ、事故とは言えど、か、彼女がいるのにほんとご、めん事故だけどね…』
「い、いや、じじ事故だし、セーフだろ…俺こそごめん、な。」
赤い顔のまま、二人とも俯く。
…何を照れてんだろう。
幼馴染だしこれくらい何ともない…はずなのに、
こんなに胸が高鳴るのは、どうしてなのかな…
彼女がいるって言われた時、心がチクって傷んだ。
仲直りできた時、心の中が幸せで満たされた。
キスした時、胸が高鳴った。
────もう…隠せないや。
この感情に気づかないほど、あたしはバカじゃないよ。
…多分、ずっと前から、大輝のことが好きだった。
これは、幼馴染としての好きじゃなくて、恋愛感情の好き。
今まで、幼馴染ってレッテルを貼られて…気づきたくない感情だった。
できれば、このまま幼馴染でやり通すつもりだった。
…でも、ダメだ。
大輝がいなくなって、あたしがあたしじゃなかったのは…それだけ、大輝が大切で、生活に欠かせない人だったってこと。
…知らないふりをしてた。
本当は、もっと前から思い当たることがあった。
勝手に好きになって、勝手に失恋した。
大輝には彼女がいる。
これは紛れもない事実。
…何だろう。
言っちゃ悪いけど、大輝と直見の仲が良いようには見えないんだよね…
表向きは、ちゃんと楽しそうにしてるつもりなんだろうけど、大輝が心から笑えてない…っ、気のせいだよね!
多分…直見に嫉妬したからこう言いたかっただけだと思う。
…最近疲れたような、諦めたような冷たい目…遠くを見てる大輝の事をあたしは理解しようとしてなかった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。