第20話

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2018/01/08 08:36
【楓Side】



しばらく黙って話を聞いてたんだけど、途中からあたしも辛くなってきて、気づいたら涙を流してた。



サッカーができなくなった大輝を、捨てるなんて考えをされてたあたしが憎い。








…考えるより先に、手が出た。




バチンッ





激しめな音が非常階段辺りに響く。






無意識に、大輝の頬に強烈なビンタを食らわせていた。




さすがに予想してなかった対応なのか、目を見開いて頬をさすっている。





あたし(楓)
…あのさ、なんであたしがサッカーやめた大輝を捨てるとか思うわけ?
大輝 (だいき)
…俺の取り柄がなくなるから。
あたし(楓)
は?
あたし(楓)
あんたの取り柄なんていくらでもあるわ。
顔でしょ、スタイルでしょ、優しい所、元気な所、無邪気な笑顔、誰に対しても平等な所、ポジティブな所…まだまだあるよ。

怒り口調でこう言うあたし…


褒めてんのか貶してんのかよく分からないね。
大輝 (だいき)
…っでも、
あたし(楓)
でもじゃない!!!
この数あるうちのどこかに、サッカーができるっていう取り柄があったのは確か。
だけど、まだ全然残ってるし、部活行ってなかったあんたに喧嘩を除いてあたしが冷たくしたりした?
大輝 (だいき)
…っっ
あたし(楓)
…幼馴染って、そんな安いものじゃないんだって…
あたし(楓)
大輝が死んだ時の方が辛かったんだからっ!
























大輝 (だいき)
…は?
あたし(楓)
…え?
大輝 (だいき)
何…俺が死んだ時って?
あたし(楓)
あっ…


やばい。

熱くなりすぎて、余計なこと言った。





あぁああああ!!!

どうしよ。





でも、誰もタイムリープなんて信じないし、いいや…てきとーにごまかそ。
あたし(楓)
…そ、そういう妄想、ね!
大輝 (だいき)
…ふーん。





だめだ、全然納得してない。





大輝 (だいき)
…俺さ、秘密打ち明けたから、次楓の番な。
あたし(楓)
ん?
っ秘密なんて何も…
大輝 (だいき)
とぼけるな。
今までのおかしな行動には理由があるんだろ?

おかしな行動…

あぁ、あのおいしいやつね。

あたしも家帰ったら速攻食べるけどさ、ポテチが一番好きかな...






...すみませんでした。
あたし(楓)
...おかしな行動なんてしてないと思うんだけどなあはは
大輝 (だいき)
...岩田の授業で寝てて、起きた時、俺を見て驚いてた。
文化祭の出し物決めの時、急に教室を飛び出した。
頭ぽんってするといつも怒るくせに…何でも上の空で。

...なんか、隠してんだろ?
あたし(楓)
っ!...そ、そんな日もあるよね、、。
大輝 (だいき)
言い訳苦しいでさっさと秘密を吐きやがれ。
あと、俺が文化祭の日に死ぬってなに?



手強いなぁ。


どうしよう...話した方がいいのかな?


でも、「自分がもうすぐ死ぬ」なんてあたしが言われたらドッキリかと思うし、信じたとしても怖すぎる。






...黙っておこう。

助け終わって、大輝の安全が分かったら...冗談混じりで話してみようか。



...本当は、こんな嘘つきたくないんだけどね。

しょうがない。













全国のポチさん、ごめん。
あたし(楓)
話すよ...
あたし(楓)
実はさ、あたしのおばあちゃん家が犬飼ってて...名前はポチ。
死んじゃう少し前までは元気だったのに、病死しちゃったんだって。
居眠りしちゃった授業あったじゃん?
あれの前日にそうポチが死んだって電話がきたの。
それであんまり寝れなくて...
おばあちゃんがすぐ近くの高校の文化祭にポチを連れて行こうと思ってところ事故に会ったんだって。

だから怖くなっちゃって...


本当にごめん。

だけど、大輝に死んじゃったなんて言っちゃったから...この手の話は避けられないと思う。



もう一度謝らせてください。

全国のポチさん。
勝手に死なせてごめんなさい。

元気にたくましく生きてね。







言い訳としては完璧じゃないかな。
ちょっと泣きそうな演技を入れたりもして...ね?



大輝を見るが、何の表情もない。

...無表情ってやつですね。




これは、分かりにくい。

何を考えてるんだこの幼馴染は。
大輝 (だいき)
...あっそ。お疲れ様でした。
なんなのこいつ。

嘘だとしても飼い犬が死んじゃったんだぞ。

もっとかける言葉があるやろが。




はぁ...



でも良かった、信じてくれてるみた...
大輝 (だいき)
...じゃねーだろ。
お前演技下手くそすぎな。
あたし(楓)
えぇぇぇええええ!!!
思わず叫んでしまう。


そんなあたしを見て、耳を塞ぎながら次々とあたしを論破していった。
大輝 (だいき)
お前のおばあちゃん家行く時、だいたい俺も一緒だし、犬飼ってるなんて聞いたことねーし、この前遊びに行ったばっかだから。
あたし(楓)
.......
...何も言えない。


あたしは正真正銘のバカだと今回のことでさらに自覚した。


























焦っていたあたしは...大輝の失言を見落としていたんだ。

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