「3年5組、劇場白雪姫やりまーす!」
「クレープ屋やってます!1年4組です!」
「恐怖があなたを襲う...超怖いお化け屋敷やってます!2年1組です!」
校門の近くで看板を持って、客寄せしてたんだけど…さっきから、男の人に連絡先を聞かれるのは何でだろう。
看板持って声出してるだけなのに、男の人達から逃げるので忙しい。
ずっと追っかけてくる人とかもいるし…
逃げ回りながら呼びかけをしてたら、交代時間になっていた。
...さっちゃんと回ろうと思ってたんだけど、あたしが午前で、さっちゃんが午後。
どうしようかな…1人で回ろうかな……
教室に来てみたものの、みんな当番らしく...
頭をポンポンされた。
……大輝?
行くぞってどこに?
そう言って、あたしの手を掴んで廊下に歩き出した。
...やばい、今、大輝と手繋いでる。
しかもなぜか...指と指を絡ませてる、恋人繋ぎ。
なぜ恋人繋ぎ?
…何だろ。
どうしてだろう。
大輝の横顔が泣きそうなくらい寂しい顔をしてる。
今日に限ったことじゃない。
何か...いつもよりドS発動してるし。
空き教室での事もあって、しんみりしてたあたし達だけど、雰囲気を変えたい。
あたしの気持ちが見えたのか、大輝も
...良かった、いつもの大輝。
あたしにとって難しいことを考えてたせいで、お腹すいてきた...
あたしの言葉に、大輝はくしゃりと笑って、たこ焼きとクレープがある方へ向かった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。