【楓へ】
俺は...お前に、ずっと隠してきたことがある。
簡単に言うと、俺はこの時代の人間じゃない。
いわゆる...タイムスリップってやつかな。
俺は今から250年後の未来から来た、未来人。
こんなこと言っても信じられねぇと思うけど、本当なんだよな...
俺さ、自分のいる時代が嫌になって、家出してきたんだ。
俺の時代は…理由あって、サッカーができない時代。
やったことないけど、やってみたかった。
昔の人が、どんな風にスポーツをして、どんな気持ちで体を動かしてたのか知りたかった。
だから、この時代に来たんだ。
あと、俺がここに来たのはお前が高校2年生になったばかりの時。
...悪いけど、記憶を書き換えさせてもらった。
おふくろとおやじも、子供が欲しかったけど生まれなかったらしいから、俺が息子になった。
お前との幼稚園とか小学校とか...喧嘩した話とかも、全部書き足しただけ。
お前を幼馴染にしたのは…最初は、家が近くてサッカーに関心を持ってる人だったから。
最初は、サッカーをしたくてここに来ただけだった。
けど、この時代を生きていくうちに…たくさんの仲間と出会って、お前と出会って、俺は幸せだった。
ずっとここで暮らせたら...なんて思ってたけど、家出なんて所詮は家出なんだよ。
未来からこの時代に警察が来て、俺を捜索してるらしい。
見つかると...犯罪者扱いだとさ。
だから...大事になる前に帰ることにした。
守れない約束をして...ごめんな。
あと、お前がタイムリープしたのは多分...直見がお前を階段から落とした衝撃で、たまたまタイムリープしたんだと思う。
…俺と関わった記憶は全部消すから。
今まで本当にありがとう。
最後だから言うけど...俺、お前のこと...
...やっぱ言うのやめたわ。
言い逃げはずるい。
じゃ、幸せになれよ。
大輝より
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。