そんなことを考えながら、勤務先であるグラウンドに向かっていく。
あたしは現在、地元のサッカークラブの専属マネージャーをしている。
地元って言うけど、割と強いところで良く雑誌に載ったりテレビに出たりしている。
そういえば...今日は、チームメイトがもう一人増えるんだっけ。
準備が一人分忙しくなるなぁ...
...実は、涼先輩もここに所属しているんだよね。
あたしがマネージャーをすることになる前から、入ることが決まってて、所属したのは本当に同期。
先輩だけど同僚みたいな…そんな感じ。
正直、男の人だらけで怖かったから嬉しかった 。
あたしと同い年って聞いてるから、少しワクワクしてる。
サッカーがすごい好きだったけど、一度足を怪我して挫折してしまったらしい。
けど、またできる足になったんだってさ。
知らない人でも夢が続いてくれて嬉しい。
似たような話を聞いたことあるような...
涼先輩が一旦部屋に戻り、誰かを連れてきた。
ドクンドクンと胸が激しく動き出す。
忘れちゃいけない人。
大切な人。
いなくなってしまった人。
でも、だめなの。
最後まで思い出せない。
彼は誰...?
あたしは彼と前に会ったことがある?
頭がズキンズキンと痛む。
思い出せそうで思い出せない。
二人の会話が謎なんだけど...
可愛いから襲う?
襲うってあの?
可愛いってどこをどう見たらそうなるんですか?
涼先輩...新人くんと眼科行ってきなさい。
新人くんと二人になった。
すると彼はにっこり笑った。
あたしは...この笑顔を見たことがある。
「.......あたしは子どもじゃない!」
「.......ごめんね...」
「...…サッカーを諦めないで!」
脳裏にこんな言葉が浮かんできた。
これは...誰に向けて言った言葉なの?
思い出せそうで思い出せない。
喉元まで出かかってるのに。
きっと、すごく大切なこと。
忘れちゃいけないこと。
……違う、初めましてじゃない。
あたしだけかな...会ったことがあると思っているのは。
欠けたピースがだんだん埋まっていく感じ。
忘れちゃいけない人。
大切な人。
あたしに幸せをくれた人。
高校2年生の文化祭後から探してた欠けたピースが全て埋まった。
全部思い出したよ。
幼馴染で...あたしの好きな人。
学校で一番にモテて、サッカーが大好き。
喧嘩した時は、いつも先に謝ってくれる。
くしゃっと笑う笑顔が大好きだった。
また、会えたんだね。
身体に温もりを感じる。
今…大輝触れてる。
ちゃんとここにいる。
あたしが強く抱きしめると、それ以上に強く抱きしめてくれる。
顔を見上げて、唇を重ねた。
ふふっ、実はね...
あたし達は…5度目のキスをした。
一度遠く離れてしまっても、気持ちだけは繋がっていれる。
どこにいたって、あなたを思ってた。
また、恋を始めよう。
何度でも、君と。
〜【何度でも、君と。】〜
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!