第4話

時空の精 ((ミク))
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2018/01/02 16:34
楽しげな高い声がどこからとも無くあたしの鼓膜を揺らす。
誰かに聞こえたのかと思い、急いで教室を見渡すがみんな黒板に釘付けであたしになんて見向きもしていない。
真奈華
空耳か……。
最近、色々バタバタしていて、充分な睡眠なんてとっていなかった。
疲れから空耳でも聞こえたんだろう。
家に帰ったら散々しなければならないことはある。
今のうちに少しでも睡眠をとっておこう。
筆箱を枕がわりにし机に突っ伏す。
狭い狭いこの机の上。だけど家なんかにいるよりも何倍も安心する。どんなに狭くても、誰にも侵食されないあたしだけの空間。教室に差し込む日差しに照らされ目を閉じる。すると……
ミク
ミク
こら!何寝ようとしてんのよ!こっちよこっち横!!
先程聞こえた声が聞こえベランダの方へ顔を向けるとそこにはあたしと変わらないぐらいの年頃で、小柄の女の子が立っていた。
真奈華
え……誰!?こんな所で何してるの!
突如目の前に現れた不思議な少女。
驚きやら恐怖やらいろんな感情が大渋滞を起こして思わず立ち上がり叫んでしまった。
座っていた椅子が立った衝撃で、ガシャーンと音を立て倒れる。
ハゲジジイ
東浜。何1人で言ってんだよ。お前とうとう頭おかしくなったか?
真奈華
……いや、なんでもないです……。
驚きのせいで思考回路がおかしくなったのか、いつもは絶対に敬語なんて使わないハゲジジイに敬語を使ってしまった。
1度はみんなあたしに注目したが、数秒後には何事もなかったかのようにまた黒板をロックオンする。
ミク
ミク
ふふふ♡驚かないでよ!あたしは時空の精のミクよ!!よろしく。
真奈華
時空の精……?
新種の厨二病なのだろうか……。
こんな企画をしているのをYouTubeで見たことがある気がする。
ミクと名乗った子はパステルカラーのピンクとブルーのミニドレスを着ている。ヘーゼル色の髪の毛に同じ色の大きな丸い瞳。キュッと上がった口角……なんだか、大好きなあの人にどことなく似ている気がした。
ミク
ミク
そうよ!時空の精!!あなたが悩んでるのが聞こえたから飛んできたのよ!
真奈華
何言ってるですか。早く教室戻らないと単位落としますよ
うちの学校はスパルタもいい所である。
全教科75点以下赤点。全国模試で偏差値63以下が2回以上続けばサヨウナラ。
熱なんて39.0あったとしても来るのが当たり前。1日でも休もうもんなら勉強にはついていけない、自称元白衣の天使を名乗るオバサマ方に死ぬほど嫌味を言われる。
だから、こんな所でコスプレして厨二病発言してる暇なんてない。
ミク
ミク
何言ってんのよはあんたの方よ!!あたしは時空の精だって!まず、あなた以外には見えてないから心配しないで。
あなた本当は看護師なんかなりたくないんでしょ??
真奈華
……え??なんで知ってるの?

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