息を切らしながらいう。
少し遅れて祖母がニコニコしながら入ってきた。
じいちゃんが焦ったり、自分を取り乱す姿など見たことがなかった。祖父はすぐにベビーベッドにいるあたしに近づいて抱き上げた。
母が不思議そうな顔をする。
初めて知った自分の名前の由来。
じいちゃんの目は潤んでいた。
きっと徹夜して必死に考えてくれたんだろう。あたしは勘違いをしていた。じいちゃんはただ世間体のためにあたしに色々言ってたんじゃなくてあたしの事考えてて言ってくれてたんだ。
高校に入る前、なんでこんなにも今の高校の看護科にじいちゃんがあたしの事を進学させようとしてるのかばあちゃんがこっそり教えてくれたことがあった。
ばあちゃんはそう言ってくれたけど、その時の私の胸にはちっとも響かなかった。まだまだ世間知らずの子供ってとこもあったけど、じいちゃんの事悪人って決めつけてどんなにいい話を聞いても、自分の中で聞く耳を持とうともしていなかったのだ。
でも、今ならちゃんとわかる……。
あたしはなんでそんなことも気づけなかったんだろう。自分は本当に馬鹿だ。思わず目から涙がこぼれる。
ミクがあたしを抱きしめていう。
全部……全部初めて聞いた。自分の中で勝手に悪者だって決めつけようとしてたんだあたし。それに気づくとほんとに申し訳ない気持ちでいっぱいになった。こんなにみんな大切に思っててくれてたのにあたしはなんにもしてあげれてなかった。優しさを勝手にダメな方に変換しようとして、自分から家族の時間を壊し続けて生きてきてたんだ。そう気がついたらなんだか、胸の中に詰まってたものが涙とともに流れていく感じがした。
最後に誰にも聞こえないけど病室に響き渡る大きな声でお礼を言い深くお辞儀をし、部屋を出た。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。