蓮音くんは驚いてフリーズしている。
やっと笑顔が見れて、少しだけほっとした。
好きなものは人を強くする。
あたしが蓮音くんから教えてもらったことの一つ。
思わずオルドの名前を出しそうになってしまい慌ててごまかす。
777が好き。そういう蓮音くんの表情はあたしもテレビで見たことない、1人の少年としての顔をしていた。
そんな大好きな『涼』と2年後に共演するなんて思ってもみないだろう。
とっさに嘘をついた。なんとなく名前は言うべきじゃない気がした。蓮音くんと話をしながら案内してもらい、近くの映画館で仮面ライダーの映画を見た。
映画を見終わり外に出ると東京の人の多さを実感し迷子になりそうになる。
蓮音くんが心配そうな顔でのぞき込む。
自分で墓穴を掘ってしまいあたふたする。
いつもの蓮音くんに戻っていた。
あたしはふと蓮音くんの名を呼ぶと蓮音くんは振り向く。
蓮音くんの口から仮面ライダーになりたいという話は聞いていない。でも、どうしてもこれだけは伝えておきたかった。どんなに苦しくて全てが嫌になった時でも希望を捨てたらいけないって、夢は人を強くするって教えてくれたのだって蓮音くんだったから。
その言葉を聞き、立ちすくむ蓮音くんを見て、つづける……
蓮音くんに背を向け駆け出した。蓮音くんが凌夏の名前呼んだけどぜったいに振り向かないって決めていた。
いつかまた再会するためのあたしなりの約束だった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。