8月。レーザービームのような日差しが照りつける夏の日。
あたしは澄み渡るエメラルドグリーンの海にいた。
超人気マンガの実写化である作品のヒロインを演じさせて貰えることになり、本日クランクインであるため海に来ていた。
高橋蓮音くんとの共演ということもあり、1段と気合が入る。
あの不思議な旅の日から、はや5年の時が流れた。
忘れないようにってドーナツ旅行記として書き記したけど、忘れたことなんて一度もなかった。
あたしの全てが変わった1日だったから。
ミク……見てる?あたし夢叶えたよ。
蓮音くんの演技の足元にもまだまだ及ばないけど、少しでも同じ土俵で同じ温度のモノを届けられるようにしがみついていこうと思う。
ミクならきっと、あたしらしいって笑ってくれるかな。
あの時より少しだけ大人になった憧れの人を眺める。
あたしは何一つ変わってないのかもしれない。
蓮音くんに背を向けスタッフさんに呼ばれた方へ向かう。
後ろで、蓮音くんの呟くような声が聞こえた気がして振り向いてみたけれど、蓮音くんももう自分の撮影の方へ行ってしまってそこには誰もいなかった。
気を引き締め太陽の輝く方へ向かった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。