第5話

交換
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2017/12/29 02:20
「こちらこそ!

ってか、何それ?」


「え?」


優馬くんが指さしたのは私のスマホ。


何それ、って…。


「スマホだけど…?」


「…ふーん。」


声は興味なさげだけど、優馬くんはまじまじと私のスマホを見る。


…そんなに珍しいものじゃないんだけど…。


あ、もしかして、ケースかな?


私のスマホケースは私の手作り。


手芸が好きな私が、ラメグリッターとかリキッドを入れて作った傑作!


揺れるラメが可愛い。


「あ、雨、止んできたな。」


優馬くんがそう言いながら空を見上げる。


「ほんとだ…。」


じゃぁ、帰ろうかな。


でも、まだ話していたい。


そんな気分だった。


「…オレ、もう帰んなきゃ。」


優馬くんが、左手に付けた腕時計を確認して言いながら立ち上がった。


私もスマホの時計を見ると5時半を過ぎていた。


30分以上話してたんだ…。


でも、もう帰んなきゃ。


30分、短いな。


「そっか…。」


そうだよね、ただの雨宿りだもんね。


もう。


私は寂しいという気持ちを俯いて見せるという形で示した。


「…あなた。」


突然、名前を呼ばれる。


しかも呼び捨て。


私は驚いて、顔を上げた。


「明日も、ここで会おう。」


「えっ。」


驚いている私に、優馬くんは腕時計を外して私に差し出した。


「え?」


「オレ、明日もここに来る。

このハンカチ、洗って返すから。」


「えっ…。

そんな、洗わなくても、今返してくれて大丈夫だよ?」


…優馬くんって律儀な人。


「いや、申し訳ないから。

それに…」


そう言って一旦俯く優馬くん。


「?」


それに…?


ぐっと顔を上げ、私を見た。


ドキ。


「…あなたに会える口実にもなるし!」


優馬くんは少し顔を赤らめて、強い眼差しでそう言った。


ドキッ。


今までに無いくらい大きく、速くなる鼓動。


…この、気持ちは…。


「これは、約束の代償。

絶対来る、って約束。

借りてるハンカチと交換ってことで。

だから、あなた持ってて。」


そう言って優馬くんは私の手を取って、優馬くんの腕時計を握らせた。


「…分かった。

でも、こんな高価なもの…。」


壊しそうで怖いよ…。


「いーのいーの、今それくらいしか約束の代わりになるもの持ってねーし。」


でも…。


「わ、私っ…。」


声が震える。


顔が熱い。


「約束のモノがなくても、優馬くんに会いたいから…

明日は必ず、ここに来るよ?」


だから、腕時計なんて、持ってられないよ…。


そう言うと優馬はさらに顔を赤くした。


「あーも、いーんだよっ。

あなたに持っててもらいてーの。

分かった?」


優馬くんの見せた笑顔につられて私も笑顔になる。


「…うんっ。」


「じゃー明日、5時にここ、待ち合わせな!」


「うんっ!

絶対来るね!」


「オレも!

じゃーまたな!」


私は優馬くんの後ろ姿を見送った。

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