「失礼しまーす…」
ガラガラ、と重い扉を開けて入る。
あれぇ、司書の先生、いないのかな?
せっかく本の場所聞こうとしたのに…
これじゃー自分で探すしかないかぁ。
こんな、何千冊ってある本の中から…。
私はあれから1週間経った放課後、図書館に来ていた。
家庭科部が文化祭で出す料理、何にするか一人一人アイディアを出せって言うんだもん。
普通はクラスごと教室を使ってお化け屋敷とか、写真館とか、カフェとかお店を出すんだけど、家庭科部は別。
単独でレストランをやる。
あと、何かお菓子の販売もする。
去年はジンジャークッキーを売ったっけ。
もー、クラスとの掛け持ち大変すぎる。
今年、私たちのクラスは縁日をやるらしい。
ヨーヨー釣りとか、射的とか、わたあめとかもやるのかな?
向かいのクラスがコスプレを出すらしくて、浴衣とかもあるって言ってたから、お互いに儲かるかも!
…んで、今は家庭科部のこと!
何がいいんだろ、メニューとしては普通にオムライスとかパスタとかでいい気がするけど…。
あ、パウンドケーキとか販売するのいいかも!
どんな種類があるのか、私が思いつかないようなものがあるかとか、調べるために図書館に来た。
んーと、料理本の棚は…。
入ってすぐ左にカウンター、右は小説の棚。
カウンターの奥にあったんだっけ、専門的な本は。
そして小説の棚の奥にテーブルや椅子が置いてある。
あ、あったあった、料理の本。
って、多いなぁ…。
ふと、テーブルの方を見てみると、1人、椅子に座ってテーブルにたくさんの本を広げてる人が。
…って、あれ成宮先生じゃ。
私は驚かせようと思ってそーっと近づいた。
…あれ?
近づいてみると、先生は寝ているってことが分かった。
左手はテーブルにおいてある1冊の本に添えられ、右腕に顔を半分うずめた形で寝ている。
…綺麗な顔立ち。
先生ってイケメンなんだなぁ…。
私は静かに隣に座った。
図書館に二人きり、っていい感じ!
ドキドキするけど、幸せ。
「せーんせっ…」
優しく声をかけてみる。
ふふっ、起きない。
「…っ。」
あぁ、なんか言いたい。
今。
「先生。」
寝てるからいいよね。
ちっちゃい声で言えばバレない。
ドキドキ…
鼓動が速くなる。
「好き。」
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。