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第20話

いつもと違う帰り
「お、お邪魔しますっ…」


助手席のドアを開けられ、車に乗り込む。


黒いセダン。


いかにも大人の男の人が乗りそうな車…。


「ぷっ、“お邪魔します”って…家かよっ」


先生が私の言葉に吹き出した。


「もー、先生笑わないでっ!」


…よかった。


私、先生と今まで通り話せてる。


先生も、もしかしたら私に気を使って気まずくならないようにしてくれてるのかもしれない。


バンっと助手席のドアを閉め、運転席に乗った先生に聞く。


「ねぇ、なんで成宮先生なの?

担任でもないのに…。」


あの時教室に先生がいたのが不思議。


「今日の施錠当番オレなんでね。

なに、不満?」


先生が眉をひそめる。


「いやっ、別にそういう訳じゃ…!」


私は手を横に振りながら弁解する。


…むしろ、先生でよかったよ。


ちょっと、複雑な気持ちはあるけど…。


エンジンをかけ、車が動き出す。


「「…。」」


会話が終わっちゃった。


好きな人とのあいだに流れる沈黙は重い。


もし私が先生と恋人だったら、何も喋らなくても心地いいんだろうけど…


今は私の片想い。


何か喋らなきゃって思うのに、何を喋ったらいいんだろうって考えちゃう。


先生が変に思ったらやだな。


お門違いなこと言ってたらどうしよう。


今までどーやって話してたっけ…?


そんなことが頭をぐるぐる回って、結局何も喋れなくて。


気付けばもう私の家の前に来ていた。


…短かったな。


「…ごめんね?先生。

メーワクかけちゃって。」


カチャ、とシートベルトを外してドアを開ける。


「ほんとだよー、まったく…。」


ぐ。


「そこは“全然迷惑じゃねーよ”…とか言ってよー!」


私は声を低くして言う。


「…なにそれ、オレのマネ?

似てねぇーっ!」


先生が笑う。


「ふふっ」


私もつられて笑顔になる。


ねぇ先生、知ってる?


先生が笑ってたら、私も笑顔になれるんだよ。


それくらい、今は先生が好きだよ。


私は車を降りてドアを閉めた。


…なんか寂しい。


ただ送ってもらっただけなのに、カレカノでもなくただの先生と生徒なのに、私一人、甘い雰囲気を感じてる。


ウィーンと窓が空いて、先生が助手席に身を乗り出した。


そんな先生に向かってペコっと頭を下げる。


「ありがとうございましたーっ!」


「どーいたしましてっ。

なんかあなたが敬語使うとか変な感じするな〜っ」


そう言って先生はニコッと笑った。


ドキッ。


…私、先生の笑顔でドキドキして…新しい恋なんかに進めるのかな〜…


「け、敬語の方が感謝の気持ちが伝わると思って…」


「ははっ、そーだなっ。」


こんなに寂しいなんて思っちゃうのはなんでだろう。


…夜だからかな。


「…じゃあ、おやすみ。

また明日な。」


「うんっ。

さよーならっ!」


窓が閉まって、クルマが走っていくのを私は見送っていた。


…やっぱり、無理だ。


先生のこと、こんなにも好きなのに…


諦めるなんて。


次の恋に進むなんて。


そんなの、できないよ…。