第22話

告白
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2018/01/04 02:15
「先生、私…」


グッと顔を上げて、先生を見つめる。


冷静に…冷静に…


自分にそう言い聞かせた。


「…成宮先生のことが、好きです。」


「っ…」


言った。


言っちゃった。


…多分、私の声は震えていた。


でも、ちゃんとまっすぐ、先生を見て言えた。


驚きと切なさが混じったような顔の先生。


…分かってる。


その顔の心理。


先生は私の好意を知ってたから。


図書館で、私の密かな告白を耳にしちゃってたから。


まさかこうやって告白するなんて思ってなかったんだと思う。


それに…どうせ振らなきゃいけないって。


無理なの、分かってる。


先生が私の事を恋愛対象として見てないのも知ってる。


振る側も辛いよね。


分かってる。


だから…


だからね…?


「…でも、返事は今、しないで。」


私の言葉に、また先生は驚いた顔をした。


「…卒業式の日、もう1度、告白しに来る。

だから、返事は…その時のお願いします。」


私はそれだけ言ってその場を走り去った。


「はぁっ…はぁっ…」


言い逃げ、みたいになっちゃったかな…


でも…私は弱いから…


振られるの、分かってるけど…


怖いから…


先生から、その言葉を聞くのが。


“ごめん”って言われちゃうのが。


怖いから…。


ごめんね、ずるくて。


でも、許してください。


まだ私、先生との関係を、疎遠にしたくないの。


だから、また…


卒業式の日に言うから。


まだ1年以上あるけど、そのときまで、私はきっと先生のことを好きだと思うから。


そのときに、ちゃんと振ってください。


立ち止まると、そこは渡り廊下。


生徒達の準備をしながら笑い合う声があちこちから聞こえ、木の葉っぱが風に揺られてザワザワと音を立てている。


鼻がツンとして、こらえていたはずの涙がこぼれ落ちた。


空には夏の太陽が光り輝いていた。

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