月日は流れ、私たちは3年生になった。
講座別授業になり、先生との関わりは無くなった。
私の講座の数学の担当の先生は、成宮先生じゃない。
3年生の教室は数学研究室とは遠く離れていて、廊下ですれ違うこともない。
それでもまだ、私は先生が好きだった。
そして、卒業式ー…
「卒業生、退場。」
アナウンスが流れ、音楽とともに前の人に続いて体育館をあとにする。
もう、この体育館を使うこともなくなっちゃうんだ…。
この廊下も、この階段も…
私の歩くこの校舎のどの場所とも、もうお別れ。
クラスメートとも、部活の後輩達とも。
教室に戻ると、どっと涙が溢れ出した。
「もー、あなた泣かないでっ!!
もらっちゃうから!」
「なっちゃぁぁぁぁんっ!!!」
私はぐしゃぐしゃの顔でなっちゃんに抱きつく。
3年生でも同じクラス、同じ講座だったなっちゃん。
でも今後はアメリカの大学に留学しちゃうの。
だからもう、しばらくは会えない。
「さびしぃよぉぉぉっ!」
「それはこっちのセリフだから!!」
なっちゃんも涙ぐむ。
うぅ、涙止まんなくなる…。
卒業ってこんなに悲しかったっけ??
中学の頃よりも涙脆くなってる気がする…。
「てかさ、てかさっ」
なっちゃんが自分と私の涙をハンカチで拭いながら言った。
「成宮先生にはいつ告るのっ??
今日でしょっ?今日!」
ドキッ。
そう。
今日はいよいよ告白の日。
先生に、告白する日。
朝から頭の片隅にずっとその事があってドキドキしてる。
「…最後のホームルームが終わったあと、もう解散でしょ?
まぁ、みんな写真撮ったりするとは思うんだけど。
そのときに、最初に、行ってこようと思う。」
先生には朝伝えておいた。
なるべく誰もいない場所がいいんだけどって言ったら、数研はその時間誰もいないって言われた。
だから、数研で待っててって。
久しぶり話した。
ほんの少し喋っただけなのに、懐かしくてドキドキした。
先生がかっこよすぎて、緊張した。
そーいえば、前に告白した場所も数研。
1年以上も前のことなんだなぁ…。
先生、思った通りまだ気持ち変わってないよ。
諦めようって思った時もあったけど、それでも無理だった。
たまに、ほんとに時々、先生を見かけたら、胸が高鳴って。
挨拶できた時はレア過ぎて、2年の頃より嬉しかった。
先生、好き。
今度は、ちゃんと振ってね。
そうしたら私は…
前に進めるから。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。