「うわぁ、すご!」
「ね!
せっ…ゆーまっ…!」
まだ“先生”って呼びそうになっちゃう。
お昼ご飯を館内のレストランで食べ終わり、イルカショーを見る。
イルカ、可愛いっ!!
「ふっ、やっぱ水族館にして良かったな〜…」
先生も目を輝かせて見入ってる。
ふふっ、子供みたいでかわい〜っ。
「なぁ、これからどこ行く?」
目はショーに釘付けのまま、私に聞く先生。
「そーだね〜、もう見終わっちゃったもんね」
このショーが終わったら、帰るだけ。
「帰るにしてはまだ早いよな?
今何時?」
先生がそう聞くから私は腕時計で時間を確認した。
「3時…前っ。」
まだ3時。
まだ帰りたくない。
「あ、あなた。
その時計ってさ…。」
ドキッ。
先生が私の腕時計を指して言う。
「へ?
これ?」
なんか、デジャヴュ。
前にもこんなことあったような…。
「あなたっていっつもそれ付けてるよな。」
「う、うんっ…。
変…?」
そんなにおかしいかな?
男物だから?
やっぱ、彼氏以外からもらったもの付けてるのって、嫌だよね…。
「いや、別に。
それお気に入り?」
…質問の意図が分からない…。
「え…?
うん、まぁ。」
「そっか…。」
先生…?
なんで、そんな嬉しそうな顔してるの…?
「なぁ、さっきの話の続きなんだけど…」
水族館を出て車に戻った時、先生は言った。
「うん?」
「その時計、誰からもらった?」
あ、やっぱりそこ気になる…?
「ちゅ、中2の時に…会った男の子に…。」
「へぇ…。
その人のこと、好きだった?」
ドキッ。
な、なんでそんなこと…っ。
「う、うん…」
「ふぅん。」
ドクッ。
なんだろう、この重い雰囲気。
先生、私のこと…
「あ、あのっ、先生が嫌なら、外すからっ…!」
「へ?」
私が言うと、先生の拍子抜けした声が聞こえた。
へ?
「いや、別に嫌じゃないよ。
…むしろ、嬉しい。」
「…は?」
わけがわからないのですが。
「ふっ。
間抜けな顔。」
なっ…。
先生は一呼吸置いて言った。
「4年前、あなたに腕時計を渡した男は…オレだよ。」
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。