第31話

タイムスリップ
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2018/01/06 03:54
「オレたちは、タイムスリップして会ったんだ。」


「…??」


タイムスリップ?


そんなこと、現実に起こるの?


「…それが本当だとして、いつ?どっちが?」


優馬くんが、だよね。


だって私、普通に麻美と遊んだんだもん。


「…あなた、あの日、突然雨降ってきたんだったよな?」





なに、いきなり天気?


「う、うん、天気予報は晴れだったのに。

だから私、傘持ってなくて…」


それで、雨宿りするために公園のベンチで待ってたら、優馬くんと出会った。


ほんと、偶然。


「多分、その時。

雨が降り始めた時。

あなたが十年前にタイムスリップしてきたんだ。

オレのとこでは天気予報から雨だったから。」


「えっ!?」


そーだったの!?


じゃあ…ホントの世界では雨降ってなかったのかな…?


てか、私が…!?


10年前の、2004年に!?


「オレさ、次の日、公園に行ったんだよ。」


赤信号で止まり、優馬くんがこっちを見て言う。


「私も行った!」


優馬くんも…来てたんだ!!


「でも、会えなかった。」


「うん。」


そーだよ…。


行ったのに。


お互い行ってたのに会えなかったんて…


「それに、アドレス交換したはずなのに、メールしても繋がらない。」


「それ!」


優馬くんも…同じこと考えてたんだね…


トクンットクンッ。


胸の音が鳴る。


偶然出会った二人が、同じことを考えて、ずっと会いたいと願って、また、巡り会えた。


そんなこと…


私に起こるなんて、思ってなかった。


「だからオレ、ちょっとイラついて…。

オレの腕時計取って、メルアドも偽装してあって、詐欺かよ!って」


え。


笑ながらそういう優馬くん。


「ちょっとぉー!

私そんな悪い人じゃないってば!」


私もあの時、一瞬それ考えたけどさ!


わたしが慌てて言うと、優馬くんはまた笑いながら話し出した。


「分かってるって!

だってさ、よく考えたら、あの時、あなたスマホ見せながらメルアド教えてくれたじゃん。

だから、あなたのメルアドは本物。」


「…。」


すごい、そんなことまで…。


なんか、探偵みたい…。


「なのに繋がらない、絶対おかしい。

それに、“スマホ”なんて2004年のあの時代にはなかったし、あなたはLINE交換したいって言ってたんだよな。

今ならあなたの言葉の意味がわかるけど、当時はそんなもんねーから…」


「あ…そっか…」


だから…“あの時の”優馬くんは不思議そうな顔してたんだ。


断ったんじゃなくて、知らなかったんだ。


よかった…。


変に思われなくて。


嫌われなくて。

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