「オレたちは、タイムスリップして会ったんだ。」
「…??」
タイムスリップ?
そんなこと、現実に起こるの?
「…それが本当だとして、いつ?どっちが?」
優馬くんが、だよね。
だって私、普通に麻美と遊んだんだもん。
「…あなた、あの日、突然雨降ってきたんだったよな?」
?
なに、いきなり天気?
「う、うん、天気予報は晴れだったのに。
だから私、傘持ってなくて…」
それで、雨宿りするために公園のベンチで待ってたら、優馬くんと出会った。
ほんと、偶然。
「多分、その時。
雨が降り始めた時。
あなたが十年前にタイムスリップしてきたんだ。
オレのとこでは天気予報から雨だったから。」
「えっ!?」
そーだったの!?
じゃあ…ホントの世界では雨降ってなかったのかな…?
てか、私が…!?
10年前の、2004年に!?
「オレさ、次の日、公園に行ったんだよ。」
赤信号で止まり、優馬くんがこっちを見て言う。
「私も行った!」
優馬くんも…来てたんだ!!
「でも、会えなかった。」
「うん。」
そーだよ…。
行ったのに。
お互い行ってたのに会えなかったんて…
「それに、アドレス交換したはずなのに、メールしても繋がらない。」
「それ!」
優馬くんも…同じこと考えてたんだね…
トクンットクンッ。
胸の音が鳴る。
偶然出会った二人が、同じことを考えて、ずっと会いたいと願って、また、巡り会えた。
そんなこと…
私に起こるなんて、思ってなかった。
「だからオレ、ちょっとイラついて…。
オレの腕時計取って、メルアドも偽装してあって、詐欺かよ!って」
え。
笑ながらそういう優馬くん。
「ちょっとぉー!
私そんな悪い人じゃないってば!」
私もあの時、一瞬それ考えたけどさ!
わたしが慌てて言うと、優馬くんはまた笑いながら話し出した。
「分かってるって!
だってさ、よく考えたら、あの時、あなたスマホ見せながらメルアド教えてくれたじゃん。
だから、あなたのメルアドは本物。」
「…。」
すごい、そんなことまで…。
なんか、探偵みたい…。
「なのに繋がらない、絶対おかしい。
それに、“スマホ”なんて2004年のあの時代にはなかったし、あなたはLINE交換したいって言ってたんだよな。
今ならあなたの言葉の意味がわかるけど、当時はそんなもんねーから…」
「あ…そっか…」
だから…“あの時の”優馬くんは不思議そうな顔してたんだ。
断ったんじゃなくて、知らなかったんだ。
よかった…。
変に思われなくて。
嫌われなくて。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。