未来「…雷羅さん、隣座ってもいいですか?」
雷羅「…ああ」
ぎこちない様子であたしは隣に座った
とりあえず何か話題を…
未来「その本、面白いですか?」
雷羅「……面白くはない。俺が…書いたから」
未来「ええ!?」
雷羅「ビクッ‼」
未来「本を自分で!すごい!読んでもいいですか?」
雷羅「お、おう」
あたしは本を受けとると早速、読み始めた
もともと本を読むのは好きだった
未来「……」
どれくらいの時間が経ったのだろうか
雷羅「……い……おい……おい!」
未来「!」
雷羅「どんだけ集中してるんだ」
未来「ご、ごめんなさい。けど、すごく面白くて…」
雷羅「…そんなにか?」
未来「はい!」
初めて読む分野だが不思議と物語に引き込まれる
間違いなく今まで読んだ本の中でお気に入り上位に入ると思う
雷羅「……フッ、そうか」
あ、分かりにくいけど少しだけ笑った
未来「本が好きなんですね」
雷羅「ああ、本というよりは物語がだな。人の思想は自由なはずだ。だが、人は他者の思想が己の思想と異なればすぐに争いを引き起こす。しかし、物語は違う。本の中ではどんな風に考えるのも俺の自由だ。そんな自由なところが好きなんだ」
この間の集まりでは寡黙な印象だったけど
好きなものは結構饒舌になるんだな
雷羅「ところで何で敬語なんだ?」
未来「光優が敬語だったので…」
雷羅「ああ。アイツは1つ年下なんだ。あと火夜は2つ年下。別に気にするなって言ってるんだが本人がそうしたいらしい。お前も別にいいぞ?」
未来「じゃあ、そうする。あ、腕に傷が……」
そう言って雷羅の腕に触れようとした時…
バッ
避けられた
未来「え?」
雷羅「俺の記憶をみたんだろ?」
未来「!」
そうだ
雷羅はこの能力のせいで両親に追い出された
怖いんだ。自分を拒まれるのが…
雷羅「なら、俺には触れない方がいい」
けど……けど!
パシッ
あたしは雷羅の腕を掴んだ
雷羅「!」
未来「怖くない。あたしは雷羅を拒んだりしない!」
だって、あたしも貴方と似た境遇だから
未来「だから、そんな事言わないで」
雷羅「………悪かった。だから、そんな顔するな」
未来「…うん。それにしても雷羅の本、本当に面白いね。続き読んでいい?」
雷羅「もちろんだ。その前に…」
未来「?」
雷羅が手を翳すと守護石の一部分が黄色に染まった
未来「これ…」
光優が言ってた
これは思いやりと信頼の証って
雷羅を見るとさっきよりも穏やかな笑みを浮かべていた
雷羅「未来。さっき俺は思想は争いを引き起こすもとと言ったが自由であることに変わりはないと思ってる。だから、お前の意思を大切にしろよ」
未来「…うん」
それから、光優が迎えに来るまであたしは雷羅と色々な話をした
ありがとう、雷羅
貴方のおかげであたしは自分の思いを大切にしていいことを知ることができた
3日後
光優が迎えに来た
あたしの守護石を見て
光優「雷羅さん、相変わらずツンデレですね」
と言うと雷羅に静電気をおみまいされていた
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。