第35話

拒絶
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2018/03/05 06:03
火夜「はあ……はあ……みんな!」

火夜は必死にふもとの村へと走った

頭の中を過るのは幼い時の記憶

救えなかった大切な2人の命

村の奴らは無気力になった俺を気にかけ、絶望から救い出してくれた

だから、もう失いたくないんだ

大切な人を…

村にたどり着くと中央で熊のような化け物が暴れ

みんなが逃げ惑っていた

火夜「!…檮杌(トウコツ)」

何で四凶のうちの1匹がここに?

そして今、檮杌(トウコツ)は1人の少年に襲いかかろうとしていた

それは火夜に最も懐いている“勇人”だった

火夜「勇人!」

間一髪のところで火夜は勇人を抱え、攻撃を回避することができた

勇人「うっ……か、火夜兄ちゃん」

火夜「大丈夫か?」

勇人「うっ、うえーーーーん!!」

火夜「よしよし、怖かったな」

火夜は優しく勇人の頭を撫でた

だが、安心している場合ではない

火夜「勇人、話は後だ。みんなのところまで走れ」

勇人「え?火夜兄ちゃんは?」

火夜「俺は大丈夫だから!さあ、早く!」

勇人をみんなのところに行かせると火夜は檮杌(トウコツ)に向き直った

火夜「俺の大切な人たちを傷つけた事を後悔しろよ!」

火夜は手のひらに炎を召喚し、檮杌(トウコツ)に投げつけた

檮杌(トウコツ)はそれをかわし、火夜めがけて突進してくる

そこから激しい戦いが始まった

























水翔たちは火夜の家に向かっていた

未来「その四凶って一体何なの?」

未地「四凶は神獣である玄武や青龍達とは真逆の4匹の悪神のこと。あたし達のように陽と陰の存在が共存することを嫌い、好んで災いを引き起こすの」

未来「そんな奴らが…。火夜、大丈夫かな」

水翔「気がかりはそれだけじゃねえ」

未来「え?」

水翔「火夜はまだ人前で能力を使ったことがない。誤魔化しがききにくい能力の上に自分の限界値を把握しきってない。しかも、奴らの現れた場所が悪すぎる」

未来「場所って…」

水翔「アイツがよく行ってる村だ」

未来「そんな!」

水翔「急ぐぞ」




























火夜「はっ………はっ………」

身体が熱い

鉛みたいに重いし、思考も鈍ってきた

今までこんな長期戦したことなかったからな

向こうも頭はよくないみたいだが

その分、パワーが半端ない

不意打ちで何発か喰らっちまった

火夜「……っ…」

だが、時間はかけられない

能力を使うほどこちらは反動が大きくなる

次で決める

火夜「ふー…」

深呼吸をし、火夜は右手に力をこめ始めた

【グルルルルル……】

そのまま動かない火夜に痺れを切らした檮杌(トウコツ)は足を蹴り、再び突進してきた

火夜は直前で上に飛び上がり

火夜「終わりだ!!」

渾身の一撃を檮杌(トウコツ)に浴びせた

【ギャーーーーーー!!】

檮杌(トウコツ)は声にならない悲鳴をあげながら灰となって消えた

ガクッ

火夜「はあ……はあ……」

火夜はその場に力なく崩れた

もう反動も体力も限界に達していた

ゾロゾロ

回りから近寄ってくる足音が聞こえた

火夜「みんな、無事………」

途中で火夜は言葉を止めた

いや、出なかったと言った方がいいのかもしれない

村人たちは明らかに火夜を異端の者として見ていた

村人「あんな化け物を倒すなんて」

村人「手から火を出していたぞ」

村人「お前は人ではないのか?」

火夜「違う!俺の話を聞いてくれ!」

近づこうとすると、誰もが後ずさった

火夜「みんな…」

村人「近づくな!」

村人「この村から出ていけ!」


『ば、化け物』


火夜「!」

その瞬間、火夜は意識を手放した

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