私は会ったばかりの男の人と公園のベンチに座っていた。
遊具で遊ぶ子供の笑い声が遠く聞こえる。
……なんで私、「はい」なんて言ったんだろ。
でも、聞いてほしいって思ってしまった。自分で自分がわからない……。この人は、私の邪魔をしたのに。
男の人に不思議そうな顔をされて、私は彼をじっと見てしまっていたことに気付いた。
曖昧に笑う。初対面の人に名前褒められてもな、という感じだった。
私は一瞬迷った。やっぱり言わないことにしようかな?
――でも、言いたい。ずっと抱えてきたことだから。
私は全て話した。家に充分なお金がないこと。そのために母さんが毎日朝早くから夜遅くまで働いていること。私が学校に通う限り、母さんに無理をさせ続けてしまうことを。
私はちらりと宏一……(“さん”いるかな?)を見た。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!