第3話

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2018/01/05 11:48
私は会ったばかりの男の人と公園のベンチに座っていた。

遊具で遊ぶ子供の笑い声が遠く聞こえる。

……なんで私、「はい」なんて言ったんだろ。

でも、聞いてほしいって思ってしまった。自分で自分がわからない……。この人は、私の邪魔をしたのに。
ん?
男の人に不思議そうな顔をされて、私は彼をじっと見てしまっていたことに気付いた。
あなた

あっ、すみません、なんでもないです

そうか?……そういえばお前、名前は?俺は宏一(こういち)
あなた

秋峰あなた、です……

宏一
あなたか。いい名前つけてもらったな
あなた

はぁ……ありがとうございます

曖昧に笑う。初対面の人に名前褒められてもな、という感じだった。
宏一
それで、何があった?
私は一瞬迷った。やっぱり言わないことにしようかな?

――でも、言いたい。ずっと抱えてきたことだから。
あなた

……私、母子家庭で育ったんです

私は全て話した。家に充分なお金がないこと。そのために母さんが毎日朝早くから夜遅くまで働いていること。私が学校に通う限り、母さんに無理をさせ続けてしまうことを。
あなた

もうすぐ修学旅行の積立案内が来ます。きっと、母さんは何がなんでも私を修学旅行に行かせようと更に無理をします。それなら、案内が来る前に死のうって……そう思ったんです

宏一
…………
私はちらりと宏一……(“さん”いるかな?)を見た。

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